内容説明
何かを贈ること、プレゼントすること―日常的に見られるそのふるまいには、人間の本質に関わる秘密が潜んでいる。なぜ人は自分のものを犠牲にしたり譲ったりするのか。そこに「見返り」を求める気持ちがあったとすれば、贈与は交換に変容し、その本質を喪失する。ならば、純粋な贈与などありうるのだろうか。アリストテレスから新約聖書を経て、カント、モースからバタイユ、デリダに至る系譜を重厚に描き出す、著者の集大成となる論考。
目次
第1章 古代思想における“正しさ”―“義務・責任”の観念の由来
第2章 初期キリスト教における“正しさ”―その贈与性、ニーチェによる評価と批判(神との内的関係を重く見ること;カントの実践哲学;キリスト教に対するニーチェの評価と批判)
第3章 原初の社会における贈与的ふるまい(“贈与というかたちを取る”物の交流・交易;贈与的なふるまいの両義性;贈与的次元を含む運動、それを打ち消す動き(再‐自己所有))
第4章 贈与をめぐる思索(贈与的なふるまい―“不可能なもの”との関わり;贈与、サクリファイスと模擬性=反復性;苦難の時そのものが新たに、未知なるものとして生き変わること;不可能なものという試練―絶えざる中断、再開始)
著者等紹介
湯浅博雄[ユアサヒロオ]
1947年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得。パリ第三大学大学院に留学。東京大学大学院総合文化研究科・教養学部教授を経て、東京大学名誉教授。専門は、フランス文学・思想(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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