出版社内容情報
詩人の長田弘さんが逝去されてから、2020年5月で5年になります。本書はその長田さんの「新刊」です。
長田弘さん(1939~2015)は、逝去される2015年5月までの11年間にわたり、読売新聞「子どもの詩」の選者を務めていました。選んだ子どもの詩に毎日添える「選評」だけを独立した一冊にまとめ、『語りかける辞典』という書名で出版したい。それが長田さんの遺志だったのですが、それをやっと実現したのが、この『風のことば 空のことば ~語りかける辞典~』なのです。
項目は五十音順になっており、〈辞典〉のような構成です。しかしその内容は、長田さんが語りかけてくるような言葉が詰まった〈詩集〉。そして、『最初の質問』『幼い子は微笑む』(ともに講談社)で長田さんの詩を絵本化した画家のいせひでこさんの絵がすべての見開きに入っていて、〈絵本〉のような雰囲気も漂います。
何気なくページをめくれば、空から詩人の言葉のそよ風が吹いてくる――そんな不思議な一冊です。〈小学高学年から〉
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちゃちゃ
116
「まっすぐな言葉があれば、それ以上のものはいらないんだ」長田さんの言葉が本作の魅力をそのままに伝える。奇を衒いレトリックに走る空疎な言葉は要らない。大切なのは心に届く「まっすぐな言葉」。もしかしたらそれは、飾らぬ子どもたちの言葉に近いのかもしれない。本作は詩人長田弘氏が読売新聞「こどもの詩」の選者として詩に添えた選評をまとめたもの。長田さんの遺志を汲んだ、いせさんの絵がまた素晴らしい。「何が好きで、何がきらいか。それ以上そのひとを語ってしまうものはない。きみはじぶんが好き?」深い問いは大人の心も揺さぶる。2020/06/29
☆よいこ
106
辞典の形式をした詩集。読売新聞「こどもの詩」コーナーで選んだ詩に添えた「選評」を集めた物。▽もともとの選評を見ていないので、ひとつの詩がどこで区切られているのかちょっとわからなかったのですが、たぶん2行くらいで1回分なのでしょう。たくさんの短詩がひとつの見出し(タイトル)に集められ、著者の言葉として意味を厚くしている。どこで区切るも良し。▽いせひでこさんの挿絵がぴったりで、ずっと眺めていたくなる本。心地よい言葉のシャワー2021/01/26
アキ
88
長田弘の短文詩に、いせひでこの絵。もうこれだけで満たされる。語りかける辞典とあるように、あ〜わまでテーマ毎に言葉が連なる。あ・「雨」雨のしずくのむこうに見えるのは、いつも心の風景です。い・「色」絵を描くことは、絵に描けないことを描くことなんだ。見えないものを見て、物語を描くことなんだ。わ・「忘れ物」思い出はね、物に残るんだ。ちっちゃな手袋がちっちゃな手をいつまでもちゃんと覚えているように。時々一面カラーで、ハッとするような景色の絵と言葉が美しい。手元に置いてパラパラ見たい。読友さんのレビューで知った本。2020/06/04
けんとまん1007
75
敬愛する長田弘さんの詩と、いせひでこさんの絵によるコラボレーションの2冊目。なんと贅沢で芳醇な1冊なんだろう。長田さんの詩は、読んでいるだけで、心にも体にも潤いがじんわりと沁み込んでくる。本当の意味での優しさは、たおやかな強さも持っていると考えているが、長田さんの詩はまさにそうだ。2020/06/28
とよぽん
66
長田さんが選者を務めていた読売新聞「こどもの詩」、その選評を集めた『語りかける辞典』。タイトルは生前に長田さんが決めていらした。その長田さんの願いをここに形にした珠玉の一冊が本書。「あさ」から始まり、最後「わすれもの」まで。「たべる」のところを読んで、これは選評だったのだと改めて気がついた。素晴らしい言葉がたくさんあったが、「空から降ってくるような夏のセミの鳴き声は、小さな神さまたちの笑い声だったんだね。」に驚いた。2020/08/07