出版社内容情報
黒澤明、小林正樹、小泉堯史――。
世界に名だたる映画監督たちが惹かれてやまない、山本周五郎の世界。
ときに親身に、ときに邪険に。
山本周五郎の描く人間は様々な面を持ち、おそろしいほどに今を生きる人々と重なる。
本作では、黒澤明によって『赤ひげ診療譚』として映画化された「狂女の話」を初め、「深川安楽亭」「雨あがる」など名作六篇を収録。
名監督も惹かれた世界をご堪能あれ。
内容説明
安宿で妻と暮らす浪人の伊兵衛は、学問から武芸まで器用にこなす。だが、優しすぎる性分ゆえ、仕官が決まりかけては立ち消えになる日々が続いていた。ある日、喧嘩の仲裁で見せた刀の腕前が藩の老職の目に留まる。市井に生きる人々に寄り添う表題作「雨あがる」他、「深川安楽亭」など名作映画の原作六篇を収録。
著者等紹介
山本周五郎[ヤマモトシュウゴロウ]
1903年6月22日、山梨県生まれ。本名・清水三十六。1926年、「文藝春秋」に『須磨寺附近』を発表し、文壇デビュー。1932年、雑誌「キング」(講談社)に初の大人向け小説となる『だだら団兵衛』を発表、以降も同誌にたびたび寄稿し、時代小説の分野で認められる。1942年、雑誌「婦人倶楽部」に『日本婦道記』の連載を開始。1943年に同作で直木賞に推されるがこれを辞退、以降すべての賞を辞退した。著書に数多くの名作がある。1967年2月14日、肝炎と心臓衰弱のため逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ふう
93
映画化された周五郎作品6話。おかれた環境はそれぞれですが、登場するのは社会の底辺にいる人であったり、周りからは理解されないような生き方をしている人であったり、多分大方の人が思う幸せからは遠い人たちです。きれいごとかもしれませんが、わたしは彼らの生き方が好きです。幸せというのはこういうことかもと、そんなふうに生きられる彼らを羨ましくさえ思います。『街へゆく電車』の六ちゃん、『雨あがる』のたよのように人を愛せたらいいですね。2020/04/17
jima
8
映画化された6作品。映像を思い出しながら、懐かしく読んだ。2024/02/16
Yuzi Kage
8
テレビで映画「雨あがる」を放送してたので青空文庫で読み比べ 黒澤明にしては垢抜けないと思ったら脚本のみで監督は元黒澤組助監督の人だった 映画改変箇所: 殿が主人公の浪人と決闘する 召し抱えの破談を伝えに来た役人に妻が「でくのぼう」と罵る 事の顛末を聴いた殿が再度召し抱えるように、と追手を出す 等 お客がスカッとするような改変がされていたが、原作のほうが上品で好み 周五郎の小説は淡々粛々と進んでいくのが味なので、ドタバタすると駄目ですね nhkで放送してる「誰かに話したくなる山本周五郎」は静かで好きです2024/02/10
たつや
7
映画原作集というコンセプトが良かったです。「雨あがる」は確か黒澤明の没後に遺稿が見つかり、黒澤組が集結して映画化に至ったと記憶する。原作は映画同様、人情味に溢れている。2023/03/17
たつや
5
弱そうに見えて実は強い侍伊兵衛が主人公、妻と浪々の旅に出る中、安宿で出会う人々との人情噺や、弱そうに見えて強い侍が故に、賭け試合ではいつも勝ち、貧困の仲間にご馳走をするが、妻に賭け試合をした事がバレる。笑えるシーンも多く、読後にスッキリする、名作である。2025/01/02