出版社内容情報
「手紙」と「日記」を通して、書くという営為の意味を問う――。
野間文芸新人賞受賞の気鋭による青春小説集!
「最高の任務」
大学の卒業式を前にした私は、あるきっかけで、亡き叔母にもらって書き始めた、小学生の頃の日記帳をひもとく。日記を通して語られていく、叔母との記憶……。
「生き方の問題」
僕は、2歳年上の従姉に長い手紙を書き送る。幼い頃からの思慕と、一年前の久しぶりの再会について……。
貴方について書きながら貴方を忘れるという仕方で、僕は僕の深いところへ潜っていき、その結果、貴方に最も近づくんだ。(「生き方の問題」より)
内容説明
「生き方の問題」僕は、2歳年上の従姉に長い手紙を送る。幼い頃からの思慕と、1年前の久しぶりの再会について…。「最高の責任」大学の卒業式を前にした私はあるきっかけで、小学生の頃、いまは亡き叔母にもらって書き始めた日記帳をひもとく。日記を通して語られていく、叔母との記憶。野間文芸新人賞受賞の気鋭による傑作青春小説集。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
214
第162回芥川龍之介賞候補作品第二弾(2/5)、『生き方の問題』と表題作で芥川賞候補作の短編2作です。個人的には、『生き方の問題』の方が好きですが、いずれにしても、あまり新しさや才能を感じませんでした。積極的に著者の他の作品を読もうとは思いません。【読メエロ部】 2020/01/27
ケンイチミズバ
128
小説というより痛い若者がつらつら書いた手紙を読むことになる。従妹に対する昔の想い出と細身の体に反したわわなおっぱいへの憧れと性欲からそこそこの覚悟で東京から出て来た24歳、独身、貯金300万円、口数が少なく奥手の彼は地元のお年寄りもよく来るハイキングコースの山でもうおさまりが付かないくらい股間がカチカチの状況で「しようよ」と言われてここまできてるのに藪の中から何やら物音がして、やっぱり神様がダメと言ってるなんて言われて彼女は服を着始めたのが読者の私も甚だおさまりが付かない。気持ちの整理が。なんだこれは。2020/03/10
tototousenn@超多忙につき、読書冬眠中。
107
☆8.0(5点満点ですが) 小学生の頃に今は亡き叔母にもらって書き始めた日記帳を、見つめ直すことで、叔母を追憶する、第162回芥川賞候補作の『最高の任務』と、幼い頃から心惹かれていた従妹と久しぶりに再開し未練たらたらの愛慕を寄せる手紙を書き送る、太宰のように女々しい『生き方の問題』の2篇を収録。 乗代雄介いいわあ~。最高だわ。 この前読んだ『本物の読書家』も良かったけれど これもとんでもなく良い。「ぐいぐい力任せ」に惹き込まれるのでなく、「しらずしらず」のうちに取り込まれてしまっている。 2021/03/25
buchipanda3
106
中篇2本。両篇とも手紙と日記という「書く」行為に焦点を当てながら、年上の従姉、叔母への思慕が思いつくままに書き連ねられている。「生き方の〜」ではこれでもかってぐらい明け透けな想いと欲望を自意識過剰な描写で綴っており、どひゃあな感じだが圧巻でもあった。「最高の〜」は感性を心から共有できた相手の喪失から自分を見失っている姿が痛々しい。日記を書くことが叔母と自分の有り様に意味をもたらすと信じて思い出を振り返って綴る彼女。様々な事が繋がりシンクロした瞬間が印象深い。寄り添う家族の優しさが良かった。弟くんが面白い。2020/01/09
いっち
81
『生き方の問題』。2歳年上の従姉に宛てた、24歳の主人公の手紙。従姉は細身で巨乳。15歳のときアイドル活動で水着のDVDを出した。主人公はDVDを繰り返し見ている。現在26歳の従姉は、2人の子を持つひとり親。主人公は従姉からの誘いで山に登る。人目に隠れて情事にふけるが、何かの物音で頓挫する。いとこ同士で結ばれることはあるのか。従姉はなぜ主人公に好意を寄せるのか。主人公はどうしたいのか。わかったようなわからないような、しかしただならぬことが書かれている雰囲気を身にまとう本作は、乗代さんの文章表現のなせる業。2021/06/05