出版社内容情報
ゴーストという不思議な存在に導かれ、私は自分の過去を行き来するようになった。満洲での命がけの逃避行、朝鮮半島における飢餓にみちた避難民生活、屈辱の引き揚げ生活、ボロアパートでの青春時代や、ヒット曲を連発した華々しい日々などを追体験するのだった。だが、最高塔に登りつめるには、逃避行に絡む母の不貞、私の成功を根底から揺るがす兄との確執といった耐え難い苦難をも、再び乗り越えなければならなかった……。
内容説明
ゴーストという不思議な存在に導かれ、私は自分の過去を行き来する。満洲での逃避行、朝鮮半島での避難民生活、引き揚げ生活やヒット曲連発の日々などを追体験したのだ。だが「最高塔」に登りつめるには、母の不貞、兄との確執を再び乗り越えなければならなかった…。なかにし礼のすべてが小説の形で融合!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
shi-
13
素晴らしい本だった。上巻から下巻そして終わりまで夢中で読んだ。 上巻冒頭のゴーストの登場。なんでゴーストが出てきて、なんだかちょっと官能的なシーンがこのお話に…と思っていたが、やっぱりゴーストなしではこのお話は成り立たないだろうし、ゴーストがいたから素晴らしいお話になったんだ、と。 「ぼく、なんだか疲れちゃったんだ」とてつもなく、大きな一言でとても心に残った。 胸がキリキリ痛かった。2020/02/18
秋良
12
昭和のヒット曲の裏側に、作詞家なかにし礼の壮絶な人生があったという話。阿片中毒の治療、満州からの引き揚げ、実兄の不始末の話が凄まじい。ただ原曲を聞いたことがなく、羅列される俳優や歌手も知らないので帰国してからのパートはどうもピンとこず。ただ遊び方なんかがさすが高度経済成長期というか、ネットがない時代というのもあって濃くてエネルギッシュとは思った。兄の実像は予想の範囲。言い訳が多く他責思考の人間が勇敢なわけがない。下巻に入ってゴーストのオバサン臭さが薄まったのは良かった。2024/12/27
黄泉肇
0
はじめてのなかにし礼。数々の素晴らしいクリエイティブの裏側にあった壮絶な人生体験がリアル克明に描かれており完全に引き込まれた。人間とは何たる生き物かを改めて考えさせられた気分。2022/10/08
ナオ
0
どこまでがフィクションなんだろう…。2020/07/01
千本通り
0
「赤い月」のその後。田村順子、安井かずみ、松任谷國子らとの関係も興味深かったが、日本に戻って急に存在感を無くした母と執拗にまとわりついて離れない兄。著者が兄の借金をかぶってどん底のときに書いた「さくらの唄」は三木たかしの作曲で美空ひばりが歌ったが、背筋がゾクッとする凄みがあった。 第九章は著者の小説家デビュー作「兄弟」の焼き直しのようで、これはこれで決着をつけた。しかし悪魔のような兄がこの小説を書かせ、結果的に直木賞をとらせたのは皮肉だ。2020/06/19