出版社内容情報
歴史を彩る「英雄」は、どのように語り継がれ、創作され、人々の記憶と歴史認識のなかに定着してきたのだろうか。特に、政争や戦乱の敗者が伝説を介し、復活し、再生する過程を、中世から近世、近代への長いスパンでたどっていく。その「蘇り方」は決して直線的ではなく、多くの屈折と虚像を伴うが、その道筋を追うことが、新しい歴史学の楽しみとなる。
たとえば、安倍晴明のライバル蘆屋道満や、酒呑童子退治の坂田金時ら、実在の疑わしい英雄は、歴史のなかでどのようにリアリティーを吹き込まれていったのだろうか。
そして、平将門や菅原道真らの怨念への畏怖が語らせる「敗者の復活」。坂上田村麻呂や藤原利仁、源頼光に託された、「武威の来歴」の物語。鎮西八郎為朝や源義経が、西国や東北、さらに大陸へと伝説を拡大させた「異域の射程」。本書はこれらを三つの柱とし、伝説のなかに中世史の再発見を試みる。江戸の浄瑠璃や歌舞伎、往来物から、近代の国定教科書まで、伝説の変貌の過程から「歴史の語られ方」を豊かに汲み上げる。〔原本:『蘇る中世の英雄たち――「武威の来歴」を問う』中公新書、1998年〕
内容説明
歴史を彩る英雄は、どのように語り継がれ、創作され、日本人の記憶と歴史認識のなかに定着したのだろうか。平将門、菅原道真らの怨霊への畏怖。武威の来歴の物語を託された坂上田村麻呂や源頼光。西国から琉球へ、陸奥から大陸へと伝説を拡大させた鎮西八郎為朝と源義経。能・浄瑠璃から近代の国定教科書まで、伝説のなかに中世史の再発見を試みる。
目次
第1章 再生する英雄たち―江戸のなかの中世(英雄あれこれ;負け戦のものがたり ほか)
第2章 道真と将門―敗者の復活(『菅原伝授手習鑑』より;天神のわらべ唄 ほか)
第3章 田村麻呂と頼光―武威の来歴(国定教科書のなかの田村麻呂;『田村の草子』の世界 ほか)
第4章 為朝と義経―異域の射程(外伝、鎮西八郎為朝;伝説の古層をボーリングする ほか)
第5章 伝説の記憶―歴史観の祖型(再び伝説について;『本朝千字文』 ほか)
著者等紹介
関幸彦[セキユキヒコ]
1952年生まれ。学習院大学大学院人文科学研究科史学専攻後期博士課程満期退学。現在、日本大学文理学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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