内容説明
一九七〇年。大阪万博を控え、高度経済成長で沸き立つ日本。捜査一課と公安一課を対立させたある事件以降、袂を分かった刑事の高峰と公安の海老沢は、それぞれ理事官に出世し、国と市民を守ってきた。だが、かつてふたりの親友だった週刊誌編集長の息子の自殺をきっかけに、再び互いの線が交わっていく。単なる自殺と思われたが、独自に調べを進めるうち、日本全土を揺るがすスキャンダルの存在が、徐々に明るみに出る。尊重すべきは、国家なのか、それとも名もなき個人なのか。「警察の正義」を巡り、苦悩してきた高峰と海老沢の答えは―。刑事と公安、定年間近のふたりの警官。親友の息子の自殺に隠された、最後の事件。
著者等紹介
堂場瞬一[ドウバシュンイチ]
1963年茨城県生まれ。2000年、『8年』で第13回小説すばる新人賞を受賞。警察小説、スポーツ小説など多彩なジャンルで意欲的に作品を発表し続けている。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
旅するランナー
167
個人の正義か国家の正義か? 18年間袂を分かっていた捜査一課高峰と公安一課海老沢が、旧友である週刊誌編集長小嶋の息子の自殺をキッカケに再び共に動き出す。混乱から成長へと移り変わる1970年という時代背景と、自分が信じて突き進んできた道に迷いが生じる男たちの心理を骨太に描き出す。よくやった、堂場瞬一。2020/01/03
ゆみねこ
82
シリーズ3作目。袂を別った二人の刑事が親友の息子の自殺を契機に交わることに。互いの信ずる正義とは?実際の事件を絡めとても興味深く読了。あの頃は公務員の定年が55歳だったのですね。2019/12/16
雅
68
一度袖を分かち合った3人が定年を間近に控え再び混じり合う。警察小説というよりは、大河ドラマみたいなのかな?渋味がいい感じ。ラストがかの『よど号事件』というのが時代を感じた2020/11/26
背古巣
57
1/3位まではゆっくりとした感じで物語が進んで行くが、ある人物が登場することによって、唐突に緊張が高まる。後半になるまでは高峰に肩入れして読んでいたけれども、彼が暴走してしまい、証人を失うことになってからは、何故か海老沢に感情移入していた。「高峰。優秀なんだろうけど直情的過ぎるだろう。定年間近になって何やってるんだ」と怒りながら読んでいました。二人とも居なくなっちゃうんだね。残念です。面白かった(^o^)。2020/02/09
薦渕雅春
40
「焦土の刑事」「動乱の刑事」に続くシリーズの3作目。昨年11月の刊行。時も進み、大阪万博の頃が舞台。高峰も海老沢も立場は違いながら警察組織の上層部に出世し、このまま行くとあと数年で定年か。小嶋は『東日ウィークリー』の編集長を務めるまでになったが、その息子・和人の自殺からストーリーが始まる。日本を代表する総合商社に入社して間もない和人の自死、原因は何なのか? 前作から時が経ってる事もあり、テーマは汚職事件とか経済活動にウエイトが置かれているか。しかし、赤軍派も登場してラストは『よど号』ハイジャック事件へと。2020/02/05