出版社内容情報
東京、新宿、池袋……敗戦直後の混沌のなか、人々はこうして街を作り出した。いまの東京の姿を生み出した「ヤミ」の世界をガイドする
内容説明
ターミナル駅の焼け跡に人とモノが再び集まり、マーケットが生まれた。統制の目を逃れ暮らしを立て直そうとする熱気が、やみくもな「復興」を加速させる。露店では何が売られていたか。新橋の関東松田組、新宿の尾津組などのテキ屋は盛り場をいかに経営したか。呑み屋はどんな構造だったか。戦後東京の「原風景」を、生活する人々の目線で描き出す。
目次
第1章 望遠レンズでみるヤミ市
第2章 覗きこむヤミ市
第3章 ヤミ市にひしめく人びと
第4章 ヤミ市料理のレシピ
第5章 太陽の下のヤミ市
第6章 新宿ヤミ市・夜のシナリオ
第7章 焼け跡再興のプロデューサー
第8章 ヤミ市の生活文化論
著者等紹介
松平誠[マツダイラマコト]
1930‐2017年。東京生まれ。京都大学文学部卒業。立教大学社会学部教授を経て、女子栄養大学教授。生活文化論専攻。都市生活文化をテーマに広くフィールドワークを展開、各地・各時代の祝祭文化と生活についての研究を重ねる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
64
ヤミ市というと戦後の猥雑な活気が奇妙な郷愁と共に連想される。本書はそんなヤミ市を場所や売り物、行きかう人等を解説した一冊。戦後から五年ほど隆盛を極め、その後急速に消滅した様は戦後の徒花というに相応しいな。以前ヤミ市を利用する事を是とせず餓死した法曹関係者がいた。という話を聞いたことがあるけど、本書を読むと必要悪であると同時に権力が回復してくると同時に追いやられる理由も何となく見えてくる気もする。あと実際の活動を描いた部分は妙に明るそうで、楽しげであると同時に人間の逞しさも表していて本書中でも白眉だと思う。2020/02/23
100
54
戦後の物価統制の時代に隆盛したヤミ市とその活気と渾沌は、餓え・渇望・矛盾・放心からの浮上にもがく人々の生の表出。パチンコ屋のBGMが軍艦マーチなのはパチンコがヤミ市で生まれた事にルーツがあったり、大手商社の関連会社がヤミ物資に関係していたり、昭和が戦争の時代だった事を感じる。2024/08/03
ホークス
43
東京で終戦から数年間栄えたヤミ市の研究。詳細で分かりやすい。自動車輸送の壊滅で、ヤミ市は鉄道駅周辺にできた。農作物や魚を売る上野と、飲み屋街の渋谷が典型。窮乏と爆撃の後、全国で630万人の引き揚げ者と280万人の復員兵が無一物で帰還。東京はサバイバル空間と化す。「みんなと同じにしていれば安心」な者と、「同じにしていたら助からない。或いは疎外される」者の命がけの争い。マジョリティとマイノリティの間で今も続く。テキ屋の「親分子分関係」は、企業やスポーツ界の鉄則として継承される。ヤミ市的なものは日本人の中にある2020/08/28
ゲオルギオ・ハーン
33
終戦直後の東京のヤミ市について資料の他に実地観察やインタビューも含めて収集した情報をまとめた一冊。戦後史でもあまり触れられないけど本当に物がなかった、政府による強い価格統制があった期間で当時の人々は苦労されたと思う。興味深いのは食文化のところ、ヤミ市には居酒屋や寿司屋、そば屋など割とさまざまな食事処があったようだけど、今では想像できないようなレシピで作られている。シャリはおからの寿司、キャベツで水増ししまくった焼きそば(麺は1/3玉)、そしてお酒はカストリ。現代の食事に思わず感謝してしまう内容です。2021/11/01
かんちゃん
19
戦後、渋谷・新宿・新橋などで急激に栄え、その後忽然と姿を消したヤミ市に迫る。半ば公然と存在しながらも、実像ははっきりしない。戦前からのテキ屋の親分らが混乱期の日本を支えたことはどうやら間違いなさそうだ。著者が言うように、閉塞感に包まれ将来展望を描けないという意味では、敗戦直後の日本は現代の日本に似ている。華やかな打上げ花火を庶民は待望し、その破裂音と閃光に幻惑される。社会の安定と共にヤミ市が姿を消したように、欧米型資本主義はゴーン、ゴーンと鳴り響く除夜の鐘と共に終わりを迎えつつあるのかもしれない。2020/01/13
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