出版社内容情報
人生に絶望した孤独な少年が出逢ったのは、「不死身の特攻兵」と呼ばれた人だった。過去と今と、「生きること」をめぐる奇跡の物語。
内容説明
青空の下、中学二年の萩原友人は、屋上から飛ぶことを考えていた。死んでしまえば、いじめは終わる―。そんな時出会ったのは、九回出撃し生きて帰ってきた元特攻隊員の佐々木友次。彼はなぜ生き抜くことができたのか。友人は一冊の本を手に取る。時代を超えて「生きる」とは何かを問う、心揺さぶる感動の一作。
著者等紹介
鴻上尚史[コウカミショウジ]
1958年8月2日、愛媛県生まれ。早稲田大学法学部卒業。作家・演出家・映画監督。大学在学中の’81年、劇団「第三舞台」を旗揚げする。’87年『朝日のような夕日をつれて’87』で紀伊國屋演劇賞団体賞、’94年『スナフキンの手紙』で岸田國士戯曲賞を受賞。2008年に旗揚げした「虚構の劇団」の旗揚げ三部作戯曲集「グローブ・ジャングル」では、第61回読売文学賞戯曲・シナリオ賞を受賞した。現在は「KOKAMI@network」と「虚構の劇団」を中心に幅広く活動中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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しいたけ
118
本当に申し訳ない。9回も出撃し生きて帰った実在の特攻隊員佐々木友次の話と、クラス中から酷いいじめを受け特攻隊ゲームをさせられる中2の少年。このふたつを合わせて語ることに、はじめ違和感を持っていた。その浅はかさが申し訳ない。両者の背景を真剣に考え、日本の弱さを未来のために提言した本だった。雰囲気をよみ周りに流され、大きなものに従う日本人。特攻隊のような常軌を逸した行為を強いたことと、集団で行う現代のいじめは繋がっている。92歳、病院で亡くなった友次さんの言葉「こんなふうにして死んでいくんだなあ」が沁みた。2019/08/25
あすなろ
66
昨日書店で手に取り購入し、読了してしまった一冊。予定とは違うこの季節のテーマ 戦争モノをこれで読了。現代のイジメと9回特攻隊として出撃し生き残った隊員との交り。生きる・死ぬ・寿命を全うする。2つのテーマとその展開から共通することは、寿命は自分で決めるものではなく、寿命は受け入れるだけのもので、それを受け入れ、寿命がある間は生きるだけっしょというその北海道弁が染みる。そして、イジメにより自死しようとする主人公はこの特攻隊隊員について書かれた本で自死を止める。読書は自死願望から魂を救うのである。2019/08/11
馨
55
『不死身の特攻兵』小説版。個人的には、主人公と佐々木友次さんとの接触シーンがもっと欲しかったですが、実際の作者と佐々木さんとのやりとりをシーンにしているそうです。漫画の『不死身の特攻兵』を読んでいる最中なのに本作で一気に佐々木伍長の終戦、帰還後を知ってしまいました。佐々木伍長は戦場でも苦しみ、故郷に帰還しても別の苦しみを耐え、寿命を全うされた立派な方だと思います。戦争経験者が減り、話を聞く機会がますます少なくなった今、ちゃんと真実を記録した文献を読んで戦争を学んで、伝えることが私達世代の使命かと思います。2020/06/03
ナミのママ
51
今年も終戦の日を迎えました。自分の中で風化させてしまわないようにと選んだ一冊です。9回出撃しながら生還した元特攻隊員とのことで手にしたのですが、中学二年生の主人公へのイジメが壮絶でした。まさかとは思いながら、いやこのくらいは事実なんだろうなとも思えます。どちらも時代や環境は違うものの、生きるということを考えさせられる内容でした。2019/08/15
金吾
30
著書である『不死身の特攻兵』と重複する部分は多かったですが、現代のいじめと対比することにより、空気に流されやすく、自分の安全を確保した上で表面を飾り、実情にあわなくても修正できない等の日本人の脆弱性を炙り出しているように感じました。2021/07/15