出版社内容情報
祖父が死んだ――疎遠だった和典は、葬儀当日も通学し参列しなかった。そんな時、母親から父親のクリーニングを取りに行ってほしいと頼まれる。面倒と感じつつも葬儀に参列しなかった引け目から、しぶしぶその役目を引き受けた和典。品物を引き取る際に、店員から依頼はなかったがシミ抜きをしておいたという伝言を受ける。そのシミは大部分にわたる血痕だった――。父親は血を浴びるようなことをしたのか、ととたんに不安になり思いを巡らせる中、母親から最近父親が頻繁に長崎に行くようになり、絶対に女がいるに違いないとヒステリックに話していたことに思い至る。本当にそうなのだろうか? そして父親が通っているという長崎は、偶然にも祖父の出身地であることに気が付いた。何かがある――そう直観した和典は、調査にのりだす。そしてだんだんと分かってきたことは、祖父が戦時中叶えられなかったある強い想いがあるということだった。
内容説明
消えた写真と切り取られたページ、そして残された血痕…第二次世界大戦が生んだ悲しき闇とは!?
著者等紹介
藤本ひとみ[フジモトヒトミ]
長野県生まれ。西洋史への深い造詣と綿密な取材に基づく歴史小説で脚光を浴びる。フランス政府観光局親善大使を務め、現在AF(フランス観光開発機構)名誉委員。パリに本部を置くフランス・ナポレオン史研究学会の日本人初会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
えみ
60
密室を空けるその手に握られている鍵には途轍もない秘密と、何人たりとも穢すことのできない無垢な想いが込められていた!父の行動の不審を暴くKZシリーズ2作目。数学成績トップクラスの上杉和典が父、そして祖父の隠された一面を好奇心という火花を爆ぜながら「秘密」という名の発火物に向かって進んでいく。秘密に触れたら爆発するのでは?という絶妙な匂わせ感に踊らされつつ読了。密室を開けた先に広がっていたのは、罪悪に塗れた神聖な場所。叶わない願いなどない…未練成就の聖地であるこの密室は、小さな悲劇と微かな衝撃を胸の内に残す。2022/12/17
それいゆ
31
父がなぜこのような行動を取ったのかが腑に落ちず、残された血痕やタズの存在も今ひとつ説明不足で、壮大な物語を設定したにもかかわらず、内容は中途半端で終わってしまった感です。本当に二人の間に子が生まれ、その子と家族たちとの物語が展開していくストーリーの方が読み応えがあったと思います。2019/08/17
糸巻
21
Upper File2作目。上杉らKZのメンバーは高校2年生になる。医師だった上杉の祖父が亡くなったことから謎が露出し始める。持ち出された写真と切り取られた日記。祖父の幼馴染みだった女性の存在。2年前から不審な動きをする父と誰のものか不明な大量の血痕、、、全ては長崎に繋がることを突き止め現地に飛ぶ上杉…。魅力的な謎が次々と出てきてわくわくした。ただ前作に続きメンバーは脇に徹してるのが物足りないかな。面白かったけど読み終えてみれば祖母がとても気の毒に感じてすっきりとした読後感とはならなかった。2019/07/25
kei302
21
厚生省に勤務されていた経歴のある藤本しのぶ氏からの問題提議。優生保護法の逆を突く、優秀児童調査と優生思想の実践が根底にある(たぶん)。祖父と地元の幼なじみとのつながりや、太平洋戦争中、青少年の愛国心を利用した実験台(事実かどうか未確認)と祖父の過去が巧みに組み合わされたミステリアスな展開に圧倒された。2019/07/10
しのぶ
20
著者の名前を見て手に取った本。表紙で見落としていたが過去に読んだ事がある児童書に出て来るKZ関係の登場人物の作品だった。作者の知識が相変わらず素晴らしく最後まで謎を楽しめた。つかみがわからずサラッと読んだ序章なので読み終わってからもう一度戻って序章を確認。2022/09/28
-
- 和書
- ミスター・チームリーダー