出版社内容情報
堀川 惠子[ホリカワ ケイコ]
著・文・その他
内容説明
1945年8月6日、移動劇団「桜隊」が全滅した。著者は、早大演劇博物館の倉庫から演出家・八田元夫の膨大な遺品を発見。そこには、大正期に花開いた新劇が、昭和に入り治安維持法による思想弾圧でいかに蹂躙されたか。検閲、投獄、拷問の歴史と広島の悲劇までが記されていた。AICT演劇評論賞受賞作。
目次
ある演出家の遺品
青春の築地小劇場
弾圧が始まった
イデオロギーの嵐
拷問、放浪、亡命
新劇壊滅
「苦楽座」結成
彰子と禾門
眠れる獅子
戦禍の東京で
広島
終わらない戦争
骨肉に食い込む広島
そして手紙が遺された
著者等紹介
堀川惠子[ホリカワケイコ]
1969年広島県生まれ。ノンフィクション作家。『死刑の基準―「永山裁判」が遺したもの』で第32回講談社ノンフィクション賞、『裁かれた命―死刑囚から届いた手紙』で第10回新潮ドキュメント賞、『永山則夫―封印された鑑定記録』で第4回いける本大賞、『教誨師』(以上、すべて講談社文庫)で第1回城山三郎賞、『原爆供養塔―忘れられた遺骨の70年』(文春文庫)で第47回大宅壮一ノンフィクション賞と第15回早稲田ジャーナリズム大賞、『戦禍に生きた演劇人たち―演出家・八田元夫と「桜隊」の悲劇』で第23回AICT演劇評論賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
341
小山内薫と土方与志によって創立された築地小劇場からはじまり、戦後にいたるまでの新劇の歩みを演出家の八田元夫を軸に丹念に跡付けて行った労作。もっとも、著者の堀川惠子が一番書きたかったのは副題にも採られた「桜隊」の顛末であった。およそ新劇が宿命的に背負った歴史はそのほとんどが弾圧しようとする官憲への抵抗に他ならなかった。そして、それはそのまま八田元夫の個人史にも重なるのである。あるいは、桜隊がヒロシマでの被爆により全滅したこともまたそのことと深く関わっていた。すなわち追われ追われていった末での被爆だった。2022/12/02
駄目男
18
『無法松の一生』といえば村田英雄の歌でも有名だが、3度ほど映画化されている。初めは戦時中の昭和18年、阪妻こと坂東妻三郎が主演の作品で、二度目は昭和33年、三船敏郎主演の作品だが、以上二つは観たが、昭和38年の三國連太郎の作品は知らない。本来は昭和17年の舞台劇で、原作では『富島松五郎伝』という。この時に主演の松五郎を演じたのが名優丸山貞夫だが、もちろん私の知らない時代の話だ。丸山の演技は戦後、多くの人の記憶に深く残るようなもので、作家の近藤富枝は「観るたびに全身が痺れた」と感想を述べている。2023/03/10
どら猫さとっち
6
広島に原爆が投下された日、移動劇団「桜隊」が全滅した。そしてその演出家・八田元夫。彼は、数々の苦難や悲劇を生きざるを得なかった。検閲、投獄に投獄、そして原爆投下。彼の遺品から読み解く、知られざる人生と演劇への想い。その八田の姿を描ききった力作ノンフィクション。戦時下の演劇界で、激しく懸命に舞台に生きた俳優や劇作家たちがいた。彼らを襲った、戦争という悲劇に、胸が押しつぶされそうになった。戦争はこんなところに、鋭い爪痕を残す。改めて、戦争の恐ろしさと悲しみを考えさせられる名著。2019/08/09
コウジ
4
氏の著作3本目。原爆供養塔→暁の宇品と来て著者の取材力に脱帽し本作も購入。 舞台は完全な素人で戦前中となれば余計に無知。 治安維持法以降ご存知の通りの検閲、投獄、拷問、とファシズム一色の中 演劇人達は演劇(意に沿わぬ)をするか、しないかを迫られ慰問や国威発揚の道具として広島に送り込まれ被爆全滅。 本作の主人公たる八田は難を逃れるが仲間の安否を確かめる為 広島に赴き後に原因不明の体調不良から逝去する。 八田さんの「ガンマ線〜」と言う著作も気になる。 ケラリーノさんの後書きは軽過ぎと言わざるを得ないが仕方無し2024/03/23
コウみん
2
原爆で消えた悲劇の劇団『桜隊』。 その中で八田元夫は悲運の人物であった。 検閲、投獄、原爆。 昭和前期の芸術と戦争の中で芸術はいかに表現してきたか。 戦争の痛みと一緒に芸術性も消えてしまったある劇団の話だった。2019/10/17