出版社内容情報
一介の「兵」に過ぎなかった男はなぜ権力に背き、いかに坂東を制し「新皇」として君臨したか。皇室の永続を運命づけた日本史の転換点
内容説明
鎌倉幕府を築いた源頼朝、南北朝時代を終わらせた足利義満、三職推任を打診された織田信長、天下一統を成し遂げた豊臣秀吉…。いずれも時代が認める改革者であったにも拘らず、古い王朝を改めて至上の身に昇ることを望まなかったのはなぜか。その背景には、武威でもって坂東を従わせ、新豊の名乗りを得て京都の朝廷と争った末に、非業の最期を遂げた平将門の存在があった―。未だ謎の多い将門の実像に迫るとともに、不可解なあの「怨霊伝説」の真相解明にも挑む。
目次
序章 怨霊伝説を検証する
第1章 蔭子・将門の少年期
第2章 遺領が招いた争族
第3章 平良兼・良正の襲撃と源護の策謀
第4章 追捕使・将門の勇躍と逆襲
第5章 坂東独立の風雲
第6章 将門、新皇に即位す
第7章 誰が新皇を殺したのか
第8章 敗者の声と勝者の宴
終章 神田明神と将門塚の興起
著者等紹介
乃至政彦[ナイシマサヒコ]
1974年香川県生まれ。歴史家。書籍監修や講演でも活動中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
六点
81
10年ほど昔、大手町の将門塚を訪った事がある。祟り話だけ有名だった頃の時代である。年末の白昼だったこともあり、周囲のビルと同様、正月飾りが取り付けられた将門塚は、都市伝説程の怖さはなかった。塚の正体は本書の末尾で語られているのでそちらに譲る。10世紀の日本を揺るがし、武士の神話となった一人の反乱者を描く、著者の眼力は鋭く、筆鋒はあくまでも熱い。関東にとっての「英雄の神話」であり、その後の日本人の精神性に大きな影響を与えた天慶の乱はまさに「偉大なる敗北」と言う他はない。ぜひ読めべしとお薦めする一書である。2019/10/29
もりやまたけよし
46
子供の頃に見て大河ドラマ「風と雲と虹と」ですが、その背景を歴史書から辿ってみました。うまく世渡りは出来ないが、闘いが強かったのが将門のようです。いつの世にもいそうですね。そういう人って。2020/10/21
樋口佳之
37
風と雲と虹の印象がおぼろげにあるだけだから、新皇といっても日本東半分だけだったとかへえ~という感想です。将門の敗北が易姓革命の無い国を形作ったとか色々考えることはあるのですが、序章が怨霊伝説否定で始まる、著者自身型破りと語る本です。2021/02/25
Book & Travel
28
仕事で訪れる先が、平将門ゆかりの地に近いと知り手に取った一冊。在野の歴史学者である著者が、将門の生涯と反乱の経緯を追い、さらに将門塚や神田明神の成り立ちの謎にも迫る。著者の解釈が飛躍しているように思える所もあるが、将門の強さと不器用さ、京と関東の物理的かつ心理的な遠さ、仁義なき坂東武者の実態等がよく分かり、追捕史が追捕される側になり反乱に繋がっていく過程に納得感があった。仕事で訪れた茨城・常総平野は、点在する集落と見渡す限り田畑が広がっていて、そこを馬で駆け抜ける坂東武者の姿が目に浮かぶようだった。2024/11/29
ちゃま坊
25
「落花」の時代背景を知る参考書として読む。やはり多くの人の入口は怨霊伝説のようだ。平将門についての史料は「将門記」以外は少ないという。わからないことが多く、小説家の想像力の比率が高いということになる。最初は親戚との戦いだが、敵となったオバさん3人の実家が源氏だったというのは因縁を感じる。将門死後の伝説はどうやら江戸時代の創作のようだ。2020/10/27