出版社内容情報
本書は、20世紀最大の哲学者マルティン・ハイデガー(1889-1976年)が、第二次大戦後の1950年代に行った「技術」をめぐる代表的な三つの講演を新訳で収録するものである。
1950年6月にミュンヘンで行われた「物(Das Ding)」と1951年8月にダルムシュタットで行われた「建てること、住むこと、考えること(Bauen Wohnen Denken)」は、一対をなす講演になっている。ここでは人間によって作られ、いたわられる物のあり方が取り上げられるが、「物」では瓶(かめ)という身近な道具に即して、「建てること、住むこと、考えること」では橋や家屋といった建物に即して論じられているのが印象的である。そうした身近で具体的な存在者から出発して、徐々に話を展開し、最終的には世界に達する、という『存在と時間』(1927年)にもすでに見られる、ハイデガーの面目躍如と言うべきスリリングな展開を存分に味わうことができる。そうして、具体的な物に凝縮して浮かび上がる「世界」が、天・地・神・人から成る「四方界」として描き出される。
そして、1953年11月にミュンヘンで行われた「技術とは何だろうか(Die Frage nach der Technik)」は、そのような物と世界の応答関係と対照される形で、モノとヒトのいっさいをひとしなみに物的および人的資源として徴用しながら地球規模での膨張を続ける現代技術のシステムが論じられる。そのシステムは「総かり立て体制」と名づけられ、その歴史的運命からの「救い」が遠望されるに至る。
大小さまざまな技術の産物に囲まれて生きる現代人にとって、これらの講演で扱われる問題は無関係でないどころか、ますますその切実さを増している。第一級の研究者が作品を選定し、情熱をもって作り上げた新訳の講演は、本書の順序で読み進むことで初めて、ハイデガー技術論の全貌があらわにすることだろう。
内容説明
二〇世紀最大の哲学者マルティン・ハイデガーは、一九五〇年代にテクノロジーをめぐっていくつかの講演を行った。その中から代表的な三篇「物」、「建てること、住むこと、考えること」、「技術とは何だろうか」を新訳で収録する。瓶や橋などの具体的な例から出発し、徐々に深まっていく思考―技術に翻弄される現代に生きる者にとって不可欠の一冊。
目次
物
建てること、住むこと、考えること
技術とは何だろうか
著者等紹介
ハイデガー,マルティン[ハイデガー,マルティン] [Heidegger,Martin]
1889‐1976年。20世紀を代表するドイツの哲学者
森一郎[モリイチロウ]
1962年生まれ。東北大学教授。専門は、哲学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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