出版社内容情報
いかに生き、死すのか。生の在り方と人間を描いた表題作「死處」や「夏草戦記」など、戦国を舞台に人の存在を問う全篇傑作小説集。昭和16年(1941年)に執筆され、戦後の混乱期の中、未発表のまま保管されていた短篇小説「死處」。77年ぶりに発見された本作を収録した傑作時代人情小説が遂に刊行!合戦に赴くことなく留守役を買って出た家臣の真意とは、表題作にして未発表作「死處」のほか、伊達家先方隊として山中を行軍する武士たちとそれを追う女の恋を描く名作「夏草戦記」、戦場で手柄を立てたことのない良人のその本当の姿を知る妻の心の繋がりを哀切深く描いた「石ころ」など、動乱の戦国に生きた人々の生き様を通し、人の姿、在り方を問う全篇名作時代小説集。
城を守る者
石ころ
夏草戦記
青竹
紅梅月毛
土佐の国柱
熊谷十郎左
死處
編集後記
山本 周五郎[ヤマモト シュウゴロウ]
著・文・その他
芦澤 泰偉[アシザワ タイイ]
著・文・その他
菊地 信義[キクチ ノブヨシ]
著・文・その他
内容説明
第二次世界大戦、戦時下の動乱に未発表のまま置かれていた小説「死處」。77年の時を経て日の目を見た本作を初収録。その他、伊達藩の武士と少女の姿を哀切とともに綴った名作「夏草戦記」。戦場での手柄を誇らず、黙々と戦う武士とその妻を描いた傑作「石ころ」など。戦国を舞台に日本人の死生観を描く全八編。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
キムチ
52
薄い一冊にも拘らず、流石 周五郎という秀麗な筆と圧巻されるばかりのテーマ。読むのに、骨が折れた。80年弱前の再刊の標題以外、すべて戦時中のもの。彼が𠮷川栄治とは異なった歩みをほとほとと続けたことを思うと 首を垂れる。「死処」とは劇場型パフォーマンスの壮絶さだけで語れる死場ではない。子供の頃、父が「ジンカン至る所セイザン有り」とよく 言っていた・・意味が?の私。当作品を読み終え、その言葉が甦る。運命に翻弄され、草葉の露と消えたであろう累々たる屍の後に今がある2020/01/30
future4227
50
手柄を誇らず、出世欲もなく、ただ勝つためだけに命をかける。見る人が見れば相当な切れ者だとわかるが、多くの人からは軽蔑の眼差しで見られる。そのため、いわれのない周りからの嘲りや謗りに晒されるが、それにも全く動じず己の信念に基づいて黙々と任務を全うする。そして何の後悔も未練もなく死んでいく。そんな真の戦国もののふたちを描いた哀愁漂う秀逸短編集。なんと没後50年経って発見されたという未発表作品『死處』を収録。2018/09/14
ソーダポップ
33
戦国武将に仕えた家臣たちの物語の八篇。登場する武将は、上杉謙信、武田勝頼、伊達政宗、井伊直政、本多忠勝、山内一豊、福島正則、徳川家康です。戦国武将を好んで書こうとしなかった山本周五郎ですが、その武将たちに従えた家臣たちの感動的な心ばえに温かい眼差しを注いでいるところに、周五郎という作家に資質と才能が読み取れました。2022/05/19
kawa
31
ネットの朗読で視聴した「死處」「青竹」が印象的で、それらが収録の本短編集。著者お得意の人情時代物とはやや異なる武士道に殉ずる裏戦国武将物語。表題作は、太平洋戦中執筆作で掲載予定の雑誌が発行されず御蔵入り作品が偶然に発見された由。同じような背景設定で戦後執筆の収録作「城を守る者」との読み比べも楽しい。2023/07/27
のぼる
20
過去に短編を一作だけ読んだことのある周五郎さん。本格的に読んでみたいが、何から始めればいいのか分からなかった周五郎さん。 コレクションとあったので、これはお誂え向きと手に取った。 今年ハマった乙川作品に比べ、読み慣れていない分、少し読みづらさを感じたが、流石 大御所。「武士とは」が、儚く切なく、そして力強く描かれている。大量の作品を全部読む気力は無い(なんて言ったら、サムライにぶった斬られそう)が、何冊か読んでみたい。2018/09/26