出版社内容情報
手塚 治虫[テヅカ オサム]
著・文・その他
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
MICK KICHI
72
擬態と喪失がテーマ。自己保存の為に何物かに擬態して生きる術に異常に長けた女性、十村十枝子。擬態された物が全てを失い滅び行く事に一片の情けを持たない。それが自然界の法則であるかのように…。美術、演劇、文学、実業家、彼女が見初めたものは、その美貌と媚態にいとも簡単に籠絡され敗北する、手に入れた物には執着せずその瞬間から喪失が始まる。その様に何とも言えない欲望充足に手段を選ばない徹底したマキャベリズムの吸引力に目が離せなくなる。時折彼女の帰巣する僻遠の民家の奇怪さに驚愕する。
マーブル
9
手塚の世界は広い。 空想科学の世界。古代文明の世界。 神話の世界。人間の世界。 マニアと言えるほどには、読み込んではいないけれど、マンガやアニメが子どもの頃から側にあって、親しんできたファンではあると思っていたが、実は私が触れていたのは「表の手塚」だったのでは、と思えてくる。人の真似を繰り返し、栄光は手に入れるが、当人は空っぽの人間。 その繰り返しを描くことに何の意味があるのか。手塚はなぜこの物語を描こうとしたのか。 2020/04/25
イシカワ
6
私は趣味で創作活動をしています。内容はパクリばかりです。色んな作品から使えそうなアイディアやプロットを借りてきて、都合の良いように組み合わせています。パクリであることがバレないよう試行錯誤し、パクったことに罪悪感を覚えることも多いです。 主人公の十村十枝子も相手の技術を盗むのは同じ。相手を模倣して自分の中に取り込み、新しい姿へ脱皮する。だが最後に栄誉を授かるのは彼女。模倣された相手は自信を喪失し、死をも遂げてしまう。彼女くらい狡猾に生きねば、創作活動などやっていけないのではと感じました。 2020/04/18
KAZUNARI
5
他人になりきり、他人の功績をわがものにし、邪魔者は計算高く密かに消していく。男を虜にする美貌はあるが、そんな生き方の果てにたどり着く虚しさと孤独。スリリングであっという間に読み終えた。手塚さんの殺人シーンは毎度迫力あるし、惨いね。2018/11/16
アーチャー
5
主人公は人の才能を吸収し、自らの欲望を達成していきますが、主人公が良くも悪くもあっけらかんとした性格のためか、作品全体がそれほどドロドロした感じがしないのが面白いです。それから、私見ですが「手塚治虫文庫全集」の中では、本作のカバーイラストが一番印象的な出来だと思います。2012/05/10
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