出版社内容情報
美人錦絵で人気の頂点にいた浮世絵師・喜多川歌麿。モデルの女性たちとの交歓、版元や弟子との交流を情緒豊かに描く傑作連作集。美人錦絵で人気の頂点にいた浮世絵師・喜多川歌麿。モデルの女性たちとの交歓、版元や弟子との交流を情緒豊かに描く傑作連作集。
藤沢 周平[フジサワ シュウヘイ]
著・文・その他
内容説明
美しくも手癖の悪い水茶屋のおこん、惚れた男が泥棒と知り呆然とする小料理屋のお品、やくざな亭主に刺された料理茶屋の女中お糸、歌麿を陰で慕いながらも後妻に嫁ぐ弟子の千代。美人絵に描いた女たちも、愛弟子も、一見では分からない素顔を秘めていた―作家生活突入したのちに挑んだ野心的な連作集。
著者等紹介
藤沢周平[フジサワシュウヘイ]
1927年、山形県鶴岡市生まれ。山形師範学校卒。’73年『暗殺の年輪』で直木賞、’86年『白き瓶』で吉川英治文学賞、’90年『市塵』で芸術選奨文部大臣賞を受賞。’95年、紫綬褒章受章。’97年、69歳で死去。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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じいじ
94
浮世絵師・歌麿と、彼を取り巻く女たちを描いた六連作集。あくまでも藤沢周平の目で観た歌麿物語なのがミソである。結末はすべてめでたしてとはいかないが、藤沢周平の持ち味が存分にでた面白い仕上がりです。10年もの間、弟子と思って可愛がってきた娘に、ある日すでに女房を亡くしている歌麿が、心乱れる行動に…。中年男の本能・女性観が、何とも切ないのだが共感も感じられる。また、歌麿の仕事感も面白い。自分が愛せない女を描くのは、彼にとっては大変辛いようである。読み終えて思った。この物語の主人公は、歌麿+藤沢周平が重なります。2021/09/11
森の三時
43
映画の写楽やHOKUSAIなどに出てくる喜多川歌麿は、好色で斜に構えた嫌な男という感じです。本当のところ浮世絵師たちの素性はわからないことが多いという中で藤沢周平さんが歌麿に貼られたレッテルをはがそうとした作品。美人画を描く彼の態度に女という生き物に対する愛がありました。その女の哀切に寄り添う姿は新たな歌麿像を与えてくれるものでした。2023/02/23
けぴ
39
喜多川歌麿が美人画を描きながら生活を営む日常が記される。蔦屋重三郎や馬琴や写楽も登場するがストーリーの中心は一人の人間としての歌麿。陰で支える千代とのラブストーリーが伏線としてあるが意外な結末を迎える。歌麿のちょっと寅さんっぽい複雑な心境が中々の読みどころでした。2025/09/22
かんらんしゃ🎡
39
蔦重其之玖*歌麿は役者絵を描かない。名もない女を描く。ただし美人に限るってなんだよ。面食いか。人間の内奥を絵に表すんなら見目にこだわるなよ、と言ってやりてーが売れるかどうかは別の話だ。写楽の例もあるしな。女たちの愛らしくて切ない生き方。特別な人を描かないのは、それは藤沢周平と同じスタンスだ。歌麿の名を冠しながらもこの6編は市井の女たちの話だった。 2025/02/24
加納恭史
16
「橋ものがたり」も評判が高いが、ここでは、この本の喜多川歌麿に藤沢周平がどのように迫ったかについて考察する。宵待草さんが大変に気に入ったとか。気になる一冊。最初の短編は「さくら花散る」。喜多川歌麿と描かれた女の関係は興味深い。よく笑う女だった。こういう陽気な女を歌麿は嫌いでない。水茶屋鈴屋の二階から大川が見える。歌麿は川の桜を見た。おこんは「先生、あたいをお花見に連れて行ってくれません」と言う。まあその日は筆を置いて女の手を握った。二人で少し飲もうというわけだ。後から歌麿は財布の小銭が減っていると思った。2024/06/27
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