出版社内容情報
失恋し生きる気力さえ失ったさみこが、周囲の人々と編み物により、生きる力を取り戻していく“蘇生の物語”。第146回芥川賞候補作大切な恋を失い、生きる気力さえなくしていたさみこ。ある時、アボカドの種の水栽培を始める。白い根が伸び、葉が出て……ここから、彼女の“蘇生の物語”が始まる。古びたアパートの個性的な住人たちや編み物教室の仲間たちとの交流。そして、仕事の編み物にうち込んでいくうちに、彼女の心の中に光が射し込み始める。静謐で美しい文章が、日常の中のかけがえのないものを描き出す。著者初の長編小説。第146回芥川賞候補作。
石田 千[イシダ セン]
著・文・その他
内容説明
大切な恋を失い、生きる気力さえ失くしたさみ子。だがある日、アボカドの水栽培をきっかけに彼女の気持ちに変化が生じる。古びたアパートの住人たちや編みもの教室の仲間との交流により、少しずつ心の中に射し込み始める光―。傷ついたからこそ見えたこと、失ったからこそ得たもの。第146回芥川賞候補作。
著者等紹介
石田千[イシダセン]
1968年、福島県生まれ、東京育ち。國學院大學文学部卒。2001年、「大踏切書店のこと」で第1回古本小説大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しいたけ
110
前半を読んでいるうちに堪えきれずに書いたレビュー。物語の進展にて使えないものになる。40代の、拙く切ない恋。編み物になぞらえた地味で淡々とした、温かみのある日々の暮らし。それぞれの人の、面倒を大事にそっと丸めた毛糸玉のような思い遣り。読み終えるのがもったいなくて、何度も初めに戻りゆっくり読んだ。私が好きなのは、こんなふうな恋の本。2018/04/15
なつ
44
ささやかな日常の尊さに気づかされる物語。失恋し、傷を抱えた編み物講師のさみ子が、育てているアボカドをきっかけに生活を取り戻す様子が丁寧に綴られています。周りの温かい人々に支えられ、少しずつ前に進むさみ子。目の前の日常にしっかり向き合う彼女の眼差しは、強くとても優しい。まるで編まれるセーターやマフラーに包み込まれるみたいに(読んだのは夏だけれど)。2021/07/11
あおでん@やさどく管理人
41
編み物とは全く縁のない自分だが、手先の作業に没頭することで嫌なことを考えないで済む、という感覚は理解できる。また、「恋人」「夫婦」といった言葉では表せないような男女の関係性が多く出てくる。人にはそれぞれ適した「他人とのつながりの深さ」がある。それを尊重できる社会になってほしいな、と思う。2018/12/19
なっく
22
はて、なんでこの本を読もうと思ったのか。共読の読み友さんもいないし、話題になってるわけでもない。で、中身は摑みどころのないお話。主人公と元カレも別れたんだか付き合ってるんだか不明。これは日常ではよくあることで、みんな傷つくのが怖いからこうなるんだけど。せめて小説の中くらいは、愛憎バリバリでどろどろしてほしかった。私って性格悪いな。2017/05/17
K1
14
人と人が出会って、その繋がりの中で一緒になったり、離れたり、二度と会うこともなくなったり、さらに関係が深まったりとー劇的な何かが起こるわけではないけれど、ちょっとした日常が続いていく感じがしみじみとしていて、よかった。2022/03/06