出版社内容情報
東野 圭吾[ヒガシノ ケイゴ]
著・文・その他
内容説明
明治座に幼馴染みの演出家を訪ねた女性が遺体で発見された。捜査を担当する松宮は近くで発見された焼死体との関連を疑い、その遺品に日本橋を囲む12の橋の名が書き込まれていることに加賀恭一郎は激しく動揺する。それは孤独死した彼の母に繋がっていた。シリーズ最大の謎が決着する。吉川英治文学賞受賞作。
著者等紹介
東野圭吾[ヒガシノケイゴ]
1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業後、生産技術エンジニアとして会社勤めの傍ら、ミステリーを執筆。1985年『放課後』(講談社文庫)で第31回江戸川乱歩賞を受賞、専業作家に。1999年『秘密』(文春文庫)で第52回日本推理作家協会賞、2006年『容疑者χの献身』(文春文庫)で第134回直木賞、第6回本格ミステリ大賞、2012年『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(角川書店)で第7回中央公論文芸賞、2013年『夢幻花』(PHP研究所)で第26回柴田錬三郎賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
1008
東野版『砂の器』といった趣き。小説の後半は次第に悲愁の色合いを帯びてくる。そして、物語の結末では読者は悲しみを共にすることになる。『白夜行』の華やかさはないが、別の意味ではあるいはそれを上回るか。東野作品には往々にして飛躍や、破綻とまでは言わないまでも齟齬があったりもするのだが、ここにはそうした瑕瑾は見当たらない。しかも、最初から最後まで緊張感を失うことがない。まさに一気読みだった。私は東野作品を時系列で読んでこなかったが、加賀恭一郎に馴染みのある読者には一層の感興を添えることだろう。2020/10/03
Tetchy
912
加賀達が事件の細い繋がりを1本1本解きほぐしていくごとに現れる意外な人間関係。次々と現れる新事実にページを捲る手が止まらない。この牽引力はいささかも衰えず、まさに東野氏の独壇場だ。そしてこのシリーズには他の東野作品にない、一種独特の空気感がある。家族という血と縁の濃さ、そして和らぎが物語に備わっており、胸に染み入るように心に残っていく。そう、どこか昭和の匂いが漂うのだ。今回も東野劇場の演目に感じ入ってしまった。暗い事件が多いから、哀しい人々が多いから、父と母の死を乗り越えた加賀の明るい未来に希望を託そう。2017/07/25
ehirano1
648
これは新しい『白夜行』なのか?終始途切れない緊張感、そしてやがては受け止めないといけない「悲しみ」。しかし、これは「悲しみ」なんだろうか?そう受け止めるかもしくは、「人生」と受け止めるか、それは読者次第なのかもしれません。2022/07/16
カメ吉
616
久々の東野圭吾の加賀恭一郎シリーズ。やっぱりガリレオより好きですね。人情味溢れ、それでいて信じられないくらいの推理力。被害者、被疑者ともにある事情が哀しく切ない作品。殺人よりその背景に引き込まれてしまいました。加賀恭一郎の過去が色々と解き明かされて内容的に深い作品。個人的にも地元が舞台のほぼ御当地作品みたいで満足しました。2016/09/26
ノンケ女医長
355
表題の「祈りの幕」が何か、しみじみ考えながら読んだ。いろんな人に言いがかりをつけ、迷惑かけてばかりの女性。夫や娘にも悪態ばかりつき、年を重ねても丸くならず、ますます図太くなる。誰もが関わりを拒否する女性の娘は、立派な演出家になった。50日という長い公演はほぼ満席で、観客はとても満足している。彼女が下ろした幕は、表紙のように重厚で、まさに終焉を意味する。今作を読んで、とても素晴らしい劇を堪能できた気持ち。東野圭吾真骨頂の一つ。加賀恭一郎の出自、特に母の想いも最後に知れて、本当に味わい深い小説だと思う。2023/05/04