出版社内容情報
フロイトが1冊の書物にすることを企図して執筆した論文のうち、現存するものすべてを収録。第一級の分析家による渾身の新訳!本書は、ジークムント・フロイト(1856-1939年)が1915年に執筆し、『メタサイコロジー序説』という表題で1冊の書物にまとめることを意図していた論文のうち、現存する5篇と草稿1篇を収録したものである。
1900年に『夢解釈』を発表して衝撃を与えたフロイトは、その後、「ドーラ」、「ハンス」、「鼠男」、「狼男」などの症例における臨床経験を経て、包括的な理論の構築を「メタサイコロジー(メタ心理学)」の名の下に企図した。精神分析にとって大きな画期となるはずだった『メタサイコロジー序説』は12篇の論文から成るものとして計画され、フロイトは1915年3月15日から5月4日までに5篇を執筆し、『国際精神分析雑誌』で発表する。それが本書に収録された「欲動と欲動の運命」、「抑圧」、「無意識」、「夢理論へのメタサイコロジー的補足」、「喪とメランコリー」である。
さらにフロイトは、3カ月後の8月9日までに残る7篇をも書き上げた。その爆発的な知的エネルギーには圧倒されるばかりだが、なぜかそれら7篇は公表されず、『メタサイコロジー序説』も幻の書物となる。「意識」、「不安」、「転換ヒステリー」、「強迫神経症」、「投影」、「昇華」、「転移神経症概要」という表題が知られる7篇はフロイト自身の手で破棄されたものと考えられていたが、しかし1983年、書物の掉尾を飾るはずだった第12論文「転移神経症概要」の草稿が発見された。本書にはこれも併せて収録し、1915年のフロイトに起きていた思想劇を最善の形で見ることができるようになっている。
各論文の表題に示されているとおり、ここでなされているのは「欲動」、「抑圧」、「無意識」、「夢」といった精神分析の根幹に関わる概念の再構築にほかならない。書物の形にすることを放棄したことに示されているように、フロイト自身はここからさらなる進展を遂げていくが、その出発点としてこれらの論文が存在していることは否定しようもない。現存するメタサイコロジー論文の日本語訳が1冊の形にまとめられるのは今回が初めてとなる。本書は、フロイトと同様、常にみずからの理論を刷新する第一級の分析家による渾身の訳書である。
欲動と欲動の運命
抑 圧
無意識
夢理論へのメタサイコロジー的補足
喪とメランコリー
転移神経症概要[草稿]
訳者解題
訳者あとがき
ジークムント・フロイト[ジークムント フロイト]
著・文・その他
十川 幸司[トガワ コウジ]
翻訳
内容説明
一九一五年、精神分析の根本的な構築を企てたフロイトは、一冊の書をなすべく一二本の論文を一気呵成に書き上げる。しかし、結果的に一部が発表されただけで終わったその書『メタサイコロジー序説』は幻となった。本書には、一二本のうち、現存する五篇と後世に発見された草稿一篇のすべてを収録。第一級の分析家による決定版新訳が、ここに完成。
目次
欲動と欲動の運命
抑圧
無意識
夢理論へのメタサイコロジー的補足
喪とメランコリー
転移神経症概要(草稿)
著者等紹介
フロイト,ジークムント[フロイト,ジークムント] [Freud,Sigmund]
1856‐1939年。精神分析の創始者。治療の実践から独自の人間理解を引き出し、精神医療のみならず、20世紀の思想に計り知れない影響を与えた
十川幸司[トガワコウジ]
精神分析家、精神科医。山口大学医学部卒業後、自治医科大学で臨床に従事。その後、プレモントレ病院(フランス)に勤務しつつ、高等社会学院で精神分析を研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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