講談社学術文庫<br> 交易する人間(ホモ・コムニカンス)―贈与と交換の人間学

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講談社学術文庫
交易する人間(ホモ・コムニカンス)―贈与と交換の人間学

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  • サイズ 文庫判/ページ数 320p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784062923637
  • NDC分類 361.1
  • Cコード C0110

出版社内容情報

市場と資本主義はいかにして出現するのか? 人間存在の根底をなす贈与の心性と体制をえぐりだし、近代の栄光と悲惨を明らかにする。 本書の主題は、具体的事例に則して言えば、贈与と交換の社会哲学である。より正確に言えば、本書は、贈与と交換を峻別する。そうすることで、近代に出現した市場経済、そして特殊近代的な資本主義経済の歴史的位置づけ、ひいてはそれらがかかえる歴史的限定性を明らかにできるからである。近代以前の「非経済的または非交換的」な贈与体制との対比的研究のなかで、近代の経済自身の由来、それがかかえる諸問題が一層みえるようになる。
 要するに、本書は、人類が歴史的に経験してきた種々の相互行為を観察することを通して、社会存在としての人間の根源に迫る試みである。
 (中略)
……市場的交換ならびに資本主義的交換の社会が登場する決定的条件は、いっさいの贈与体制の崩壊である。言い換えれば、市場的交換と資本主義は、贈与体制を全面的に解体しないでは歴史の上に登場することができなかった。市場と資本主義は、その歴史的生成の流れに即していえば、贈与体制ならびに贈与心性とのたえざる闘いを通して出現するのであり、ある意味ではいまもなおそうである。そして贈与体制がほぼ完全に歴史的敗北をみるのは、たかだか十九世紀の中葉でしかない。しかし同時に、近代社会は、全面的に交換体制一色に染め上げられることで、制度をこえて相互行為の絆をなしてきた贈与的倫理を崩壊させるという重大な、そして致命的ともいえる代価を支払わなくてはならなかった。まさにそこから現代世界の困難な事情(相互行為の空虚化、貨幣換算的功利主義の蔓延、等々)が生まれるし、またそこに現代の思想的課題がつきつけられてくるだろう。(「プロローグ」より)

 プロローグ
  第一章「〈社会的〉なもの」とは何か
   1「社会的」の二つの意味
   2「社会的」の歴史的経験
   3 全体的社会的事実
  第二章 交易の構造
   1「交易」概念の導入
   2 欲望と解釈と理解
   3 駆け引きと制度形成
  第三章 交易としての労働──聖俗論の彼岸
   1 信仰と労働
   2 聖俗論と霊性の概念
   3 供犠と祈りと倫理
  第四章 交易としての贈与──共有される負債
   1 純粋贈与のパラドクス
   2 贈与の義務
  第五章 神話的想像の動学──贈与と所有
   1 贈与と交換
   2 ハウの概念
   3 所有と法の理念
  第六章 人間学の基本問題──贈与と威信
   1 原初の場面
   2「駆け引き」と自己破壊
  第七章「人格的所有」論──譲渡と非譲渡
   1 譲渡不可能なものとは何か
   2 交易要求の圧力
   3 兄弟姉妹の親密関係
  第五章 資本主義の誕生──贈与から交換へ
   1 市場経済の登場
   2 家政学と経済学
   3 すべての贈与論的所有形態の解体
  エピローグ


今村 仁司[イマムラ ヒトシ]
著・文・その他

内容説明

ヒトはなぜ交易するのか?いったい誰と、なにをやりとりし、それはいかなる意味をもつのか?ポトラッチ、歓待、クラ交易、供犠…。人間存在の根源をなす「負い目」と「贈与」の心性による相互行為が解体したとき、はじめて市場と資本主義が動きだす。マルセル・モースの独創的な着眼に学び、人間学に新地平を切り拓いた今村理論の精髄。

目次

第1章 「“社会的”なもの」とは何か
第2章 交易の構造
第3章 交易としての労働―聖俗論の彼岸
第4章 交易としての贈与―共有される負債
第5章 神話的想像の動学―贈与と所有
第6章 人間学の基本問題―贈与と威信
第7章 「人格的所有」論―譲渡と非譲渡
第8章 資本主義の誕生―贈与から交換へ

著者等紹介

今村仁司[イマムラヒトシ]
1942年岐阜県に生まれる。京都大学経済学部卒業。同大学経済学部大学院博士課程修了。東京経済大学教授。専攻は社会思想史、社会哲学。暴力論と労働論を中心に社会理論の構築にとりくむ。2007年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

Ex libris 毒餃子

6
マルキシズムを下地にモース『贈与論』を基にして、贈与と交換について論じた本。贈与と交換をマルキシズムにおける「交易」というキーワードに照らし合わせて、人間本性について検討している。モースもマルクスも分かっていないとなかなかキツい。しかしながら、今村仁司の文章は読みやすくて良い。2016/11/16

左手爆弾

3
いつもの今村仁司の本。というのは、要するに整理されてはいるものの、読書ノートだということだ。主張や論点が書いてあるわけではない。この本が最初に出たときならともかく、今はモースやレヴィ=ストロースなどを日本語で直接読むことができる。そちらを読んだ方がはるかに有益だろう。2017/05/11

かとたか

1
西洋の社会学者がコミュニケーションから社会を捉えたように、交易から人間を捉え直すと言う試み。ものの交易だけでなく、精神的なものも含む。文庫ではあるが、壮大な試みを感じた。社会、哲学、歴史、経済、宗教、民俗、政治、あらゆる事象の問い直しとなった。2022/04/27

ぴの

1
タイトルにもなっている「交易」の概念ですが、後半になるにつれて「贈与」「交換」が中心となるため「交易」の重要性が霞んでしまったような印象を受けました。贈与も交換も、共に交易という大きな相互行為に含まれるのだと思いますが、であれば『贈与する人間』でも良かったのかなと。また、結論で作者は、資本主義は贈与体制が破壊された結果現れたのであり、それは人間本来の在り方を犠牲にしたことを意味すると強調します。資本主義がいくら嫌でもこんな世の中になってしまったのは事実なんだから、イマココをベースに考えるべきだと思います。2017/05/24

代理

1
社会は三者関係だ、っていうのが最後まで飲み込めなかった。未開社会を何でもかんでも資本主義的に読み解くのを筆者は諌めるが、未開社会を何でもかんでも非資本主義的に読み解くのはいいのだろうか?2017/04/23

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