出版社内容情報
原発事故、オゾン層破壊、資源の枯渇……深刻なリスクと隣り合わせの現代社会の中で、科学技術とともに幸せな生を送るための必携書。私たちの日常生活には科学技術を利用した施設や商品があふれかえっている。科学技術と無縁の人生など、およそ考えられない。ところが、技術の粋であるはずの原子力発電所が大規模な事故を起こしたことで、科学技術が抱える危険が取り返しのつかないほど深刻になりうることがあらわになった。
原発のリスクだけでなく、地球上には、オゾン層破壊や地球温暖化など、科学技術が引き起こした事故や思いがけないトラブルが数えきれないほど生じている。それだけに、科学技術を社会の中にどう位置づければよいのか、どうすれば安全に利用できるのか、という問いは、ますます重要性を増してきている。にもかかわらず、個々の科学技術は高度の理科系の知識に基づくもので、社会に生きる誰もが簡単に理解できるわけではなく、科学技術の専門家たちはといえば、社会のことを常に考えながら活動を行っているわけではない。そして、社会を対象とする専門知であるはずの社会学は、科学技術を「社会現象」として十分に考察してきたとは言えないのが現状である。
だからこそ、今こそ「科学社会学」を打ち立て、その成果を社会の中で共有していかなければならない。本書は、そのための最良の一歩となる書物である。科学社会学の第一人者である著者が、豊富な具体例を用いながら、新しい学問の基礎を明快に説く本書は、まさに決定版と呼びうる必携の書にほかならない。
序 学術文庫版によせるメッセージ
第一章 科学社会学とは何だろうか
1 本書の基本的な問い
2 科学社会学事始め
3 科学技術に関する言説は共約可能か
4 自己言及・自己組織型科学社会学の原則
5 本書の構成
第二章 科学者集団の内部構造
1 科学のイメージの両義性
2 科学社会学における内部構造論
3 規範から報酬系へ
4 交換モデルとシステムモデルの批判的吟味
5 科学者集団の自律性のゆくえ
第三章 科学と社会の制度化
1 決まり文句をこえて
2 科学社会学における制度化論
3 マートンモデルと廣重モデルの批判的吟味
4 制度化の規約
5 制度化の含意
第四章 科学、技術、社会の相互作用
1 批判でもなく、賞賛でもなく
2 科学社会学における相互作用論
3 STS相互作用モデルの提唱
4 STS相互作用モデルの展開
5 一般枠組をふまえた見本例の分析へ向けて
第五章 地球環境問題を考える──科学社会学からながめてみれば(1)
1 意図せざる結果を見本例に即して考える
2 日本における新エネルギー技術開発の背景
3 海洋エネルギー技術開発と成層圏オゾン層破壊問題
4 技術開発と地球環境問題の関係
5 不確実性と同時性の含意
第六章 原子力研究・開発を考える──科学社会学からながめてみれば(2)
1 見えにくいものを浮き彫りにする事故
2 科学社会学から原子力研究・開発のどこに注目するか
3 TMI事故に立ち返る
4 日本の原子力研究・開発史からとらえなおす
5 原子力研究・開発の異種交配の展望
第七章 自己言及・自己組織型科学社会学と不確実性
1 行く末をどう展望するか
2 文化研究と「科学戦争」
3 自己言及・自己組織型科学社会学と不確実性はどうかかわるか
4 リスク社会の問題と自己言及・自己組織型科学社会学
5 今後のSTS相互作用系の展望
学術文庫版あとがき
付 録
索 引
松本 三和夫[マツモト ミワオ]
著・文・その他
内容説明
スリーマイル島とチェルノブイリで事故を経験したにもかかわらず、なぜまた福島で重大な原発事故が起きてしまったのか。―専門家も全体像を把握できないほど複雑になった科学技術はすでに日常生活に深く入り込んでいる。地球環境問題対策、原子力開発を例に、私たちが科学技術と正しく付き合う拠り所を探る。未来社会を生き延びるための必携書!
目次
第1章 科学社会学とは何だろうか
第2章 科学者集団の内部構造
第3章 科学と社会の制度化
第4章 科学、技術、社会の相互作用
第5章 地球環境問題を考える―科学社会学からながめてみれば(1)
第6章 原子力研究・開発を考える―科学社会学からながめてみれば(2)
第7章 自己言及・自己組織型科学社会学と不確実性
著者等紹介
松本三和夫[マツモトミワオ]
1953年生まれ。1981年、東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。社会学博士。東京大学助教授、オックスフォード大学セントアントニーズカレッジ上席客員研究員などを経て、東京大学大学院人文社会系研究科教授。専門は、科学社会学、理論社会学、災害社会学、技術の社会史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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