講談社学術文庫<br> 火山列島の思想

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講談社学術文庫
火山列島の思想

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  • サイズ 文庫判/ページ数 304p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784062923286
  • NDC分類 910.4
  • Cコード C0195

出版社内容情報

「日本」になる遥か前から、この列島には火山があった。日本古代文学研究史上の記念碑的作品にして、無二の名著【解説 荒川洋治】『火山列島の思想』は、美しく、たしかなことばで、日本の昔の人たちの心の情景を伝える書物だ。歴史は、その中に沈んだ、小さな点ひとつをとらえてみても、おおきくて広いものなのだと感じた。――荒川洋治(本書「解説」より)

     *

「日本」になる遥か前から、この列島には火山があった。
祭の日々に訪れ、日常を拘束しない〈非常在〉の神。著者はその祖型として〈火の山〉の流動的な生き方をとらえる。生きる土地の風土は、思想や生活態度全般の形成に根深く関わっているはずだ。こうした視点から「日本固有の神」をみなおせば、出雲神話でオオクニヌシとも呼ばれるオオナモチの神も、列島の各地に存在する火山神の共有名であったのだと気づく。そういえば、火山の国ゆえに湧き出る温泉も〈神の湯〉であった。「神の出生も、その名の由来も忘れることができる」。しかし、「マグマの教えた思想、マグマの教えた生き方は、驚くほど鞏固にこの列島に残っていったらしいのである」。
いにしえよりこの土地に培われ息づいてきた想像力のあり方から、私たちの精神は何を受け取り、何を忘却しているのか。忘れてなお、何に縛られ、何から自由になりたいのか。
画期的視点をひらいた表題作「火山列島の思想」のほか、夜と朝のはざま、すべてが一変して神が退場する夜明けの時刻から時間構造を論じる「黎明」。呪術がはらむ実用性と、実用からの逸脱として紡がれた〈ことば〉にこそ文学の起源を発見する「幻視」。生涯を童子の姿で通した人物の心の内を、数少ない資料を繋ぎあわせて見出そうと試みる「心の極北」……。
本書に収められた11篇すべてにおいて、著者は徹底してことばに寄り添い、残された文字をたよりに、かつて生きていた人々の心の断片に肉薄してゆく。その思考のうねりのなかで、古代中世の誰かのうちに、自らの断片を感じとることすらできる。日本古代文学研究史上の記念碑的作品にして、無二の名著である。

黎明――原始的想像力の日本的構造
幻視――原始的想像力のゆくえ
火山列島の思想――日本的固有神の性格
廃王伝説――日本的権力の一源流
王と子――古代専制の重み
鄙に放たれた貴族
心の極北――尋ねびと皇子・童子のこと
日知りの裔の物語――『源氏物語』の発端の構造
フダラク渡りの人々
偽悪の伝統
飢えたる戦士――現実と文学的把握
あとがき
新装版あとがき
解説――荒川洋治


益田 勝実[マスダ カツミ]
著・文・その他

内容説明

日本になる遙か前から、この列島には火山があった。いにしえよりこの土地に培われ息づいてきた想像のあり方から、私たちの精神は何を受け取り、何を忘却しているのか。忘れてなお、何に縛られているのか。ことばによって残された心の断片に渾身の学問的想像力で肉薄する、日本古代文学研究史上の記念碑的作品にして、無二の名著。

目次

黎明―原始的想像力の日本的構造
幻視―原始的想像力のゆくえ
火山列島の思想―日本的固有神の性格
廃王伝説―日本的権力の一源流
王と子―古代専制の重み
鄙に放たれた貴族
心の極北―尋ねびと皇子・童子のこと
日知りの裔の物語―『源氏物語』の発端の構造
フダラク渡りの人々
偽悪の伝統
飢えたる戦士―現実と文学的把握

著者等紹介

益田勝実[マスダカツミ]
1923年山口県生まれ。東京大学文学部国文学科卒業。元・法政大学文学部教授。国文学のみならず歴史学や民俗学の方法を駆使し、この列島に息づく精神的古層を明らかにした。類まれなる研究者。2010年逝去。主な著作は『益田勝実の仕事』(全5巻、鈴木日出男・天野紀代子他編、ちくま学芸文庫、毎日出版文化賞受賞)としてまとめられた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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お茶

5
「この列島上に暮らしてきた日本人の子孫として、いやおうなしにわたしの精神が何をその歴史から受けとっているか、それに規制されているか」を書こうとし『日本陸封魚の思い』と名付けようとしたという。そういうだけのことはあると思い知らされる著作。僕の今の興味関心としてはこの11の作品の中で、オオナムチについて論じた「火山列島の思想」そして出雲のことを論じた「廃王伝説」(そのなかの月読論)、に特に刺激を受けた。それにしてもすごい人だ。2016/01/07

AR読書記録

4
解説・荒川洋治というのが気になって手に取った。1968年に筑摩書房で初版刊行、文庫化ののち、今年講談社学術文庫にて再刊(というのかな)という過程でも、読んでおくべき内容なのかと思い。ただしタイトルから火山を巡る日本人の心性の話かと思ったら、国文学の専門誌に発表された11編からなるもので、話題は火山に限らない。私としては、〈はみだしもの〉、中心を主とする歴史の記述には漏れるものへの視線を強く感じ、そこには著者の戦争体験も大きいであろうことを考える。廃王、鄙、極北、裔、偽悪...タイトルに含まれる言葉から。2015/12/23

あきら

3
古代から中世にかけて書かれた書物の研究をまとめた本。古文や見たことのない漢字もあり、事細かく解説してくれているわけでもないので正直読みづらいのだが、そこを一生懸命読むと何だか面白い。特に大和時代の章、源氏物語の章、源平合戦の章などは、歴史の裏話を読んでいるかのよう。古文にしろ日本史にしろ、学校の授業もこんな内容ならみんな好きになるだろうに。研究書的なものはちょっと苦手だがこれは面白かったと思う。もうちょっと噛み砕いてくれたらなぁとは思うが、頭を使うという観点からもとても良い本。2020/05/10

mittsko

3
1960年前後に発表された11本の国文学論文集。筆者は自らの生きる敗戦後という時代性の自覚のなかで「文学」への視線を保ち、また実証手続きを重視しつつ、その思考は、考古学、歴史学はもちろん、神話学、民俗学、民俗学へとどんどん接続しながら展開していく。大胆な仮説も多く、とても刺激的だ。古代から中世まで、日本史を縦横に結びつける点でも爽快感をあたえる。このような日本文学研究により、筆者は、日本列島が古代から現代まではぐくんできた精神性のあり方、その連続と断絶と変化を究明しようとする。名著です。2018/02/14

小倉あずき

1
つい先日読了した朝井まかての『眩』の終盤に登場した北斎畢生の傑作が表紙絵に使われていて、浅からぬ縁を感じてしまった。 火山は荒魂の最たるもので、そこに生命力をみた我らが祖先たち。 この火山の狭い隙間で細々と命を繋いできた日本人はどこか命に対して執着が希薄なのかな。現代の長寿社会で命にしがみついている我々は日本人らしからぬ日本人となってきているのかな2016/11/05

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