講談社学術文庫<br> 遠山金四郎の時代

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講談社学術文庫
遠山金四郎の時代

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  • サイズ 文庫判/ページ数 260p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784062923170
  • NDC分類 210.58
  • Cコード C0121

出版社内容情報

天保の改革で風紀粛清を目指した老中・水野忠邦に、庶民感覚に即し抵抗した町奉行・遠山金四郎。その実像を現存史料で綿密に検証する片肌を脱ぎ、桜吹雪の見事な彫り物を見せながら、悪党たちをやり込めて「これにて一件落着」と裁きをつける名奉行。テレビの時代劇や歌舞伎、講談でお馴染みの天保期(1830?44)の町奉行、遠山の金さんこと、遠山金四郎は、大岡忠相と並んで江戸時代の名奉行として知られる。大岡忠相には「大岡政談」という江戸末期に完成したタネ本があり、そこに描かれた大岡像は虚像というのが研究者の常識だが、遠山の金さんにはタネ本さえない。はたして歌舞伎や時代劇の遠山像はまったく根拠がないものか。本書はその実像を現存する史料から丹念に明らかにする。
遠山金四郎が江戸町奉行を務めた時代には、幕府財政が窮乏するさなか風紀粛清と奢侈禁止を旨とする天保の改革が断行され、江戸庶民にも深刻な影響をあたえた。この改革を主導したのが老中の水野忠邦で、風俗取り締まりのためには庶民の娯楽である落語、手品、物まねなどを興行する寄席の撤廃や、中村座、市村座、森田座など歌舞伎三座の移転まで強行しようとした。庶民の実情を無視した時の権力者の改革案に対して、町人の成り立ちを重視し、庶民の暮らしの実情を調査して、厳しい改革に抵抗を示したのが町奉行、遠山金四郎だった。それは仮設の店舗や屋台など「床見世」の撤去案や農村への「人返しの法」など江戸の実情を無視した改革に対しても示された。本書は世の実情を考慮しない改革に対し、庶民の立場を重視した現場責任者としての江戸町奉行・遠山金四郎の闘いを検証した名著である。

原本:『遠山金四郎の時代』校倉書房 1992年刊

まえがき
第一章 遠山の金さん像の虚実
   1 逸話の作る遠山の金さん
   2 遠山の金さんの系譜と履歴書
   3 将軍お墨付きの名奉行遠山景元
第二章 繁栄の江戸か寂れた江戸か
   1 改革と江戸市中
   2 遠山の金さんと水野忠邦の対立――「俗論」と「正論」
第三章 寄席の撤廃をめぐって
   1 寄席の景況
   2 遠山の金さんの撤廃反対論
   3 寄席問題の結末
   4 その後の寄席
第四章 芝居所替をめぐって
   1 芝居町の景況
   2 遠山の金さんの所替反対論
   3 水野忠邦の反撃
   4 岡本綺堂『天保演劇史』より
   5 芝居所替の結末
   6 宮地芝居の撤廃
第五章 株仲間解散をめぐって
   1 株仲間解散令反対論
   2 奢侈な風俗の要因
   3 南町奉行矢部定謙の罷免
第六章 床見世の撤去をめぐって
   1 床見世の実態
   2 床見世撤去と遠山の金さんの反対
   3 床見世をめぐる対立
第七章 人返しの法をめぐって
   1 江戸人口の増加とその問題
   2 遠山の金さんの人返し反対論
   3 江戸人口増加の要因
   4 人返しの法
   5 遠山の金さんの無宿者対策――その一
   6 遠山の金さんの無宿者対策――その二
第八章 近世後期の町奉行たち
   1 食物商人減少問題
   2 天徳寺門前町屋の移転問題
第九章 「遠山の金さん」の実像
   1 打ちこわしの恐怖
   2「名代官」の時代
   3 名奉行物語の完成
むすび
学術文庫版あとがき


藤田 覚[フジタ サトル]
著・文・その他

内容説明

江戸後期、幕府は財政窮乏化のなか風紀粛正と質素倹約を旨とする天保の改革を断行する。風俗取り締まりのため庶民の娯楽である寄席の撤廃や歌舞伎三座の移転、廃止まで打ち出した老中水野忠邦に対し、真っ向から対立したのが北町奉行の遠山金四郎だった。庶民生活の実情を重視し、厳しい改革に反対しながら骨抜きにした名奉行の論理を明らかにする。

目次

第1章 遠山の金さん像の虚実
第2章 繁栄の江戸か寂れた江戸か
第3章 寄席の撤廃をめぐって
第4章 芝居所替をめぐって
第5章 株仲間解散をめぐって
第6章 床見世の撤去をめぐって
第7章 人返しの法をめぐって
第8章 近世後期の町奉行たち
第9章 「遠山の金さん」の実像

著者等紹介

藤田覚[フジタサトル]
1946年、長野県生まれ。東北大学大学院博士課程修了。東京大学文学部教授を経て、東京大学名誉教授。専攻は日本近世史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

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MUNEKAZ

2
遠山の金さんを通して江戸後期を語る。老中・水野忠邦による「天保の改革」の緊縮政策に、町人下層の生活を慮って反対したことから、金四郎は後に講談のヒーローになっていくわけだが、その町人に対する姿勢は金四郎独自のモノではなく、寛政の改革以降の町人層や社会の変化から他の町奉行や代官たちにも共通していたというのは面白い。金さん個人よりも、彼がそう振舞った時代背景がよくわかる一冊だった。2017/08/06

omemegaro

1
「遠山金四郎」という虚実曖昧な存在を紐解いていくうちに、天保の改革と江戸後期の町奉行が市井をどうみていたのかがわかってくる本。2024/03/09

我門隆星

0
時代劇であまりにも有名になった「遠山の金さん」の実像に迫る良書。「講談社学術文庫」の割に「柔らかい」印象があるのは、文語報告書の中の内容(江戸市中の民衆を慮った数々の文書)によるのかもしれない。まさに「名奉行・名代官を排出した時代」の奉行といったところであろうか。2016/10/20

鉄ウサギ

0
天保の改革で水野忠邦とどういう点で対立したか、が主な内容でした。もっとエピソード的なものがあるかと思ったけど、史料自体が少ないみたいだから仕方ないのかな。2016/05/20

よし

0
遠山の金さんが実在する人物とは知らなかった。水野忠邦と対立してたんやね。時代が産んだ名奉行にあっぱれ!2015/12/02

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