講談社学術文庫<br> 反歴史論

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講談社学術文庫
反歴史論

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  • サイズ 文庫判/ページ数 304p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784062922937
  • NDC分類 201.1
  • Cコード C0110

出版社内容情報

歴史から逃れられる者は誰もいない。今も歴史観をめぐる闘争に翻弄され続けている私たちが、歴史に支配されずに歴史を考えるには?「従軍慰安婦」報道をめぐって生じた「『朝日新聞』問題」に見られるとおり、今も「歴史」や「歴史観」は世間に強い感情を呼び起こし、激しい闘争の原因になっている。文化も文明も技術も、制度も慣習も言語も、今あるものはすべて過去に作られた歴史の産物であり、歴史から完全に逃れて考え、生きられる人など一人もいない。
本書は、この歴史による支配がいかにして起きるのかを解明し、歴史から自由になることはできなくても、歴史の支配から自由になる可能性はあることを示そうとするものである。
「従軍慰安婦」問題にも明らかなように、いつからか歴史は「記憶」の問題として考えられるようになった。当事者の「証言」の真偽が問われるのはそのためだが、これは歴史の支配から自由になろうとする運動だったと著者は言う。「歴史は、ある国、ある社会の代表的な価値観によって中心化され、その国あるいは社会の成員の自己像(アイデンティティ)を構成するような役割をになってきた」。国や社会によって決められたのではない歴史を生み出すために個人の記憶が重視されたが、その結果、国や社会に記憶の真偽をめぐる闘争が、つまりは歴史をめぐる新たな闘争が生み出されたのは、何とも皮肉なことである。
「古典とは、この言葉の歴史からみても、反歴史的概念である」という小林秀雄の言葉を出発点にする本書は、歴史を軽々と超える古典作品を生み出した人間が、歴史に翻弄される存在でもある、という二重の事実を繊細かつ大胆に思考していく。ニーチェ、シャルル・ペギー、ジャン・ジュネ、レヴィ=ストロースといった多彩な作家を取り上げ、哲学、文学、映画、精神分析、民俗学を横断しながら展望されるのは、真に歴史の支配から逃れて考え、生きる可能性にほかならない。戦後70年を迎える今、好評を得た名著が書き下ろしの新稿を加えて、ついに学術文庫に登場。

第1章 反歴史との対話
 1 歴史の恥辱
 2 小林秀雄と「反歴史的概念」
 3 さまざまな歴史の歴史
 4 人類学と引き裂かれた意識
 5 自然と構造
 6 歴史のパラドクス
 7 イエスを反復する
 8 強い歴史、弱い歴史
 9 歴史の欠乏と過剰
第2章 無意識・映画・存在論――思考しえぬものの思考の準備
 I 思考を脅かすものについて
  1 思考の異物?
  2 哲学の批評
  3 小林秀雄と映画
  4 純粋な起源との親密性
  5 冥界の小林秀雄に
 II 精神分析と存在論のあいだ
  1 自然は対象化されない、あるいはマルクス
  2 存在論と自然とテクネー
  3 無意識と対象化
 III イメージ空間について
  1 映画の両義性とベンヤミン
  2 シュルレアリスムとファシズム
 IV 幸福あるいは消尽
  1 アルチュセールの異化
  2 弁証法と至高性
  3 終焉と「到来しないもの」
第3章 歴史のカタストロフ
 1 歴史を引き裂く時間
 2 歴史が「繋留」であることについて
 3 歴史のカタストロフィックな経験
 4 自同性は構成されなければならない
第4章 流れと螺旋
 1 『司馬遷』の歴史
 2 『レイテ戦記』の歴史哲学
 3 流れの地図
 4 フーコーの歴史批判
引用文献
初出一覧
学術文庫版あとがき


宇野 邦一[ウノ クニイチ]
著・文・その他

内容説明

歴史を超える作品を生み出す人間は、歴史に翻弄される存在でもある。その捩れた事実から展開される繊細にして大胆な思考。ニーチェ、シャルル・ペギー、ジャン・ジュネ、レヴィ=ストロースなど多彩な作家を取り上げ、哲学、文学、映画、精神分析、民俗学を横断しつつ展望される、歴史に抗いながら歴史を思考する真の可能性。新稿を加えた決定版。

目次

第1章 反歴史との対話(歴史の恥辱;小林秀雄と「反歴史的概念」 ほか)
第2章 無意識・映画・存在論―思考しえぬものの思考の準備(思考を脅かすものについて;精神分析と存在論のあいだ ほか)
第3章 歴史のカタストロフ(歴史を引き裂く時間;歴史が「繋留」であることについて ほか)
第4章 流れと螺旋(『司馬遷』の歴史;『レイテ戦記』の歴史哲学 ほか)

著者等紹介

宇野邦一[ウノクニイチ]
1948年、島根県生まれ。京都大学卒業。パリ第8大学哲学博士。立教大学名誉教授。専門は、現代思想・映像身体論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

nobi

19
「反歴史」って?と手に取った本。個々の生や死を捨像する非人間的な「歴史」への批判の歴史から説き起こし、それら不定形な概念を紙漉き職人のような繊細さと機敏さとをもって見事に漉いている。が、そこに留まらない。反歴史の行為そのものを問い、対象化とは、対象化する主体とは、対象化を成立させる言語が阻むものは、と殆ど19世紀後半以降の哲学史、その苦闘の過程を辿る。その筆致は熱い。ついには、《<構成されたもの>として思考するのでなく、<構成すべきもの>として、<構成の過程>として思考する》と啓示のような一文に出会った。2015/05/30

恋愛爆弾

14
必要なのは(私のような)やる気のない馬鹿のための反歴史・主体の解体だと思いました。あるいはやる気のない馬鹿のための微分ともいえるやり方があるといいんですが、さしあたっては、本書で紹介されている柳田國男の反歴史的戦略(〈柳田は、たしかに歴史の外部の人であると同時に、その外部を確実に内部化する方法をもっていた〉ことがわかる書き方)が腑に落ちる感じです。柳田の文章って苦手だったんですが、もうちょっとちゃんと向き合おうかなと思いました。……ていうか、うん、色々もうちょっとちゃんと勉強しよう……2021/06/23

∃.狂茶党

9
歴史は、垂直軸や、個人で捉えられがちですが、水平軸や、水面の細波の如きものもあり、ともすれば公の歴史からこぼれ落ちるそれらも、先人たちのどりょくもあり、今日では、歴史と認識されている。 作者はその辺に蟠りが強いのかな。 2022/12/13

kapo54

3
僕が大学受験をしたときの入試問題はこの本だった。(年齢と大学がバレる笑)2016/01/11

朽木孤島

2
思考とそれを脅かすもの、引き裂かれるように間にあるものをとらえつづけること。すべてに両義性があり、つまりすべてに引き裂かれる襞の余地はある。どのように巨大に見えるものでも、微分していけば、裂け目が現れる。2015/12/14

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