出版社内容情報
摂関制と受領が誕生した古代国家の転機とは 桓武天皇による相次ぐ遷都。中央では天皇の権威が確立し藤原氏の摂関制が成立する一方、地方では伝統的郡司層が没落。日本史の重要な転換点を複眼的に描き出す。
坂上 康俊[サカウエ ヤストシ]
著・文・その他
内容説明
律令国家の誕生から百年になろうとする頃、桓武天皇は長岡京、平安京と遷都を重ねる。そして九世紀、天皇の権威が確立してゆくなか、中央では藤原氏北家による摂関制度が成立、地方では伝統的郡司層の没落と国司長官の受領化が進展する。奈良時代末期~平安時代初期に展開した「古代の終わりの始まり」と著者が位置づける古代社会の再編を精緻に描く。
目次
第1章 平安遷都と皇位継承
第2章 天皇いかにあるべきか
第3章 帝国の再編
第4章 求法の人々
第5章 政務処理と法
第6章 摂関制度の成立
第7章 徴税論理の転換
第8章 地域社会の変容
第9章 受領と負名
著者等紹介
坂上康俊[サカウエヤストシ]
1955年生まれ。東京大学大学院博士課程中退。現在、九州大学大学院教授。専攻は、奈良・平安時代史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KAZOO
113
日本史というと昔は中央公論社版の全集が定番で私も何度か通読しました。ただ最近はこの講談社版がかなりいいのでハードカバーとこの学術文庫版を読んでいます。この巻では第2章の「天皇いかにあるべきか」と第4章の「求法の人々」がかなり充実している気がします。全体的には摂関政治の確立ということなのですがこの二つの章だけでも独立して読むことができます。天皇制の基本的な考え方がこの時点でかなり変わったということがわかります。最澄と空海についてもよく理解できました。2017/03/18
coolflat
14
桓武朝~醍醐朝(主な出来事。810年薬子の変、藤原冬嗣~842年承和の変、藤原良房~866年応天門の変、藤原良房~888年阿衡の紛議、藤原基経~901年昌泰の変、藤原時平)まで。195頁。薬子の変が起こった際、藤原薬子は尚侍(しょうじ)だった。これでは、嵯峨天皇の動き、意図は、薬子を通じて平城上皇側に筒抜けになってしまう。これを恐れた嵯峨天皇が設けたのが蔵人頭という役職であり、これに腹心の巨勢野足と藤原冬嗣を任じた。これ以後蔵人が、それまでの尚侍以下に代わって、奏請・宣伝の機能を中心に担うようになった。2020/06/19
かんがく
10
東アジア全体の視点から平安時代初期を記述し、皇太子や上皇の制度などが整えられる様子を描く。教科書記述だとわかりにくい格式の整備、税制や土地制度の変化が実際の資料を意訳しながら解説されている点がとても良い。古代史に関する理解がだいぶ深まってきた。2019/04/29
孤独な読書人
9
天智系の桓武朝から律令制の円熟期である醍醐朝まで。律令制の変遷、税徴収の変遷。そして平安前期の政治史など多岐に渡る話題を扱っています。受験で日本史を勉強した時は藤原北家の他氏排斥として習った応天門の変などの政変への藤原北家の関与は高くなかったのかなと本書を読んで思いました。2020/11/10
sibasiba
9
前巻よく金が続くなと思ったらやはり財政難に陥っていた模様。富豪浪人なんて初めて知った。祟りという言葉が出てきて平安時代になったのを実感。関白の始まりも興味深い。新羅海賊や新羅商人の活躍があるが日本側で積極的に外に行ったのは僧侶たちだった。今巻はちょっと読み難かった。2013/06/29