出版社内容情報
風に翻弄される凧のように転変する双子の兄弟の運命。現在と過去を緻密な構成で描き、戦後文学の峰をなした芸術選奨文部大臣賞受賞作虚無とアイロニーをまとい、人生の不条理を見つめ続けた異色の戦後派作家、梅崎春生。『桜島』『日の果て』で戦時の極限下における心象を、『蜆』『ボロ屋の春秋』で市井にひそむ人間の本質を描いた著者が、過去の戦争と現在の日常とを
緻密な構成でゆるぎなく繋ぎあげた、晩年の集大成。芸術選奨受賞作。
梅崎 春生[ウメザキ ハルオ]
著・文・その他
内容説明
虚無とアイロニーをまとい、人生の不条理を見つめ続けた異色の戦後派作家、梅崎春生。『桜島』『日の果て』で戦時の極限下における心象を、『蜆』『ボロ屋の春秋』で市井にひそむ人間の本質を描いた著者が、過去の戦争と現在の日常とを緻密な構成でゆるぎなく繋ぎあげた、晩年の集大成。芸術選奨受賞作。
著者等紹介
梅崎春生[ウメザキハルオ]
1915・2・15~1965・7・19。小説家。福岡県生まれ。東京帝国大学文学部国文科在学中に「風宴」が「早稲田文学」に掲載される。太平洋戦争での軍隊生活を経て、戦後『桜島』を始めとした小説を次々に発表し、第一次戦後派と呼ばれる。54年「ボロ家の春秋」で第32回直木賞、「砂時計」で第2回新潮社文学賞、64年「狂い凧」で芸術選奨文部大臣賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
松風
23
個人所有の「思い出」としての戦争。共有を拒む身振りが垣間見えるのに、でも、描かれたものは全て“腑に落ちる”。高校時代『桜島』を読んだ時の衝撃が、さらに練れた感動に昇華された感あり。2014/11/20
ステビア
14
「幻化」を準備した作品、と解説にある。俺もそう思う。この作家は好きだ。2014/09/05
つーさま
11
どの登場人物もひょんなことから人生が思わぬ方向へと狂い出す。主人公の英介は、戦争中自ら死を選んだ弟・城介をはじめ家族にまつわる記憶を北風を受け暴れる凧を操るように必死になってたどり続ける。その姿は、人生を運命という一言で片づけることを頑なに拒んでいるように見える。もっと言えば、どうしようもできない偶然に己の身を委ねているようにすら感じられる。冒頭とラストを飾るシーンは、まさにそうした姿勢を象徴するようで、小説の中でもとりわけ印象的。アイロニーとユーモアとがいい具合にミックスされた力作。2013/10/21
刳森伸一
4
戦時中に自殺した双子の城介を巡る回想を軸に進む物語。戦争や自殺を背景に浮かび上がる人間関係や主人公の栄介が各人に抱く感情といった微妙なものが静かにそして淡々と語られるだけといえば、それだけなのだが、なぜか目が離せず、ある種の興奮を持って読み進めてしまった。捉え難いものを捉えようとしている様がそうさせるのだろうか…2018/06/06
APOM
2
最後までじっくり味わって読んだ。主人公の栄介、その双子の弟・城介のキャラクターがとても良い。二人の対比が面白かった。じわじわと染み入る良作。「幻化」も読みたい。2013/12/04