講談社文芸文庫
地下へ/サイゴンの老人―ベトナム全短篇集

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  • サイズ 文庫判/ページ数 345p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784062902021
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

出版社内容情報

ベトナム戦争時に特派員として滞在した著者が、小説で描いたベトナムの明と暗をすべて網羅。戦争に生きることを深く見つめる作品集。ベトナム戦争時に特派員として滞在した著者が、小説で描いたベトナムの明と暗を網羅。
戦争に生きることを深く見つめる作品集。

※本書では、以下のものを底本としました。
「向う側」は『日野啓三短篇選集上巻』(1996年12月、読売新聞社)、「ヤモリの部屋」は『風の地平』(1976年4月、中央公論社)、「林でない林」は『どこでもないどこか』(1990年9月、福武書店)、「悪夢の彼方」は『日野啓三自選エッセイ集 魂の光景』(1998年12月、集英社)、「“向う側”ということ」は『都市という新しい自然』(1988年8月、読売新聞社)、それ以外の作品は、それぞれの末尾に示した初出誌に拠りました。

1
向う側
広場

地下へ
デルタにて
対岸
ヤモリの部屋
サイゴンの老人
林でない林
2
悪夢の彼方――ベトナムの夜の底で
“向う側”ということ


日野 啓三[ヒノ ケイゾウ]
著・文・その他

内容説明

小説家・日野啓三が誕生した場所―ベトナムに関わる全短篇を集成。一九六四年、新聞社の常駐特派員として戦乱の地・南ベトナムに赴任、民衆や兵士の悲惨に直面し、溶解する現実感覚を“小説”のかたちで表現することを決意。六六年、初の小説「向う側」を発表、その後連続して、ベトナム戦争を舞台に、形而上的想念を、虚構的、実験的な作品へと昇華。単行本未収録作品六篇を含む、貴重な一書。

著者等紹介

日野啓三[ヒノケイゾウ]
1929・6・14~2002・10・14。小説家。東京生まれ。1952年、東大卒。小中学時代を植民地・朝鮮で過ごす。大学在学中から文芸評論を書き始め、新聞社入社後はソウル、ベトナム特派員を務める。66年、はじめての著書『ベトナム報道』、小説『向う側』を発表。主な作品に『此岸の家』(平林たい子文学賞)、『あの夕陽』(芥川賞)、『抱擁』(泉鏡花文学賞)、『砂丘が動くように』(谷崎潤一郎賞)、『夢の島』(芸術選奨文部大臣賞)、『断崖の年』(伊藤整文学賞)、『台風の眼』(野間文芸賞)、『光』(読売文学賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

市太郎

58
読友さんの感想がもとで知った日野啓三はこれで2冊目だ。ベトナム戦争時に特派員として体験した事を小説にした、という位置づけで良いのでしょうかね。読んでいてこれは現実と空想とどちらなのだろうと迷い彷徨う事も多かった。実験的な作品もあるが、日野が「向こう側」というものを本当の意味で自覚したのは、少年の銃殺刑という事でしょうか。全編強烈で、度々眩暈を起こしかけました。気力が戻ったらもう一度読んでみます。他の著書や開高健とかも読んだことはないので、読んでみたい。きついが僕はこの作家を好きだなと思いました。2015/04/07

Bartleby

15
「根源的なリアリティーを正確に感じとり表現するためには、あえて不明確であることが必要であるにちがいない。少なくともこれまで明確とされてきた表現の形式への反抗が」。初期のものが中心の作品集。特派員としての経験をノンフィクショナルに語った『べトナム報道』と比べながら読んだ。明晰さが心がけられていたそちらの著書と違い、こちらは現実感覚のゆらぎが意図的な不明確さとともに描かれている。まだ表現形式を模索している感じの作品が多いものの、後年に研ぎ澄まされていく形而上学的テーマや微細な感覚の描写はすでにしっかりとある。2015/05/31

redbaron

7
当時のベトナムの空気がムンムンと感じられる。一人の青年の銃殺刑が各短編に色濃く影響しており、不気味な雰囲気を醸し出している。そうそう、気の触れた人妻の描写がハッとさせられたわ。あと、鞭打つ女性にもw 良書だとおもうのですが、この単行本1,600円…ちとお高いのでは。手が出しにくい(貧乏なコメントでごめんなさい)。2015/01/10

kogoty

5
短編集。いやはや難儀した。特に「炎」何回読み直せばディテールをつかめるだろうか。主題ははっきりしてるのに・・・。「悪夢の彼方」は興味深かった。“向こう側”という感覚が肌合いとしてわかった気になれた。以下引用。『石に歴史はない。獣にも歴史はない。人間だけが歴史を持っているということのために支払ってきた、そして現に支払いつつあるものは何であろうか。それは人間の血であり恐怖である。人柱の上に塔が建てられたように、人間の血を支点として歴史は支えられていることを、私は見た。』2015/12/06

Y

2
重厚で満足度の高い圧巻の短編集だった。主として戦争時代のベトナムが作品の舞台として描かれているが、土地独自の風土、「向う側」という観念、戦争の凄惨さ、それが日常に異化していく語り手の心的な違和感。そのどれもが硬質な言葉でひしひしと伝わってきた。「向う側」〜「炎」までは難易度の高い実験的小説が並ぶが、年代を経るにつれ創作の経験値も上がったからか、作品としての面白さも備わっている。特に「林でない林」は前述した描写に加えて「抱擁」に見られる幻想性も加わっていて非常に良かった。2024/03/11

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