講談社文芸文庫
死の島〈下〉

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  • サイズ 文庫判/ページ数 476p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784062901871
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

出版社内容情報

一年間の出来事と24時間の心模様、さらには小説内小説を複数取り込むという手法を用い人間の愛と死の極限まで迫った記念碑的作品。後世に残したいものがある 記憶や歴史とともに
著者を代表する長篇小説
日本文学大賞受賞

一年間の出来事と24時間の心模様、さらには小説内小説を複数取り込むという手法を用い人間の愛と死の極限まで迫った記念碑的作品。

※本作品の底本は、上巻を新潮社刊『福永武彦全集』第十巻(昭和63年4月)、下巻を新潮社刊『福永武彦全集』第十一巻(昭和63年5月)としました。

福永 武彦[フクナガ タケヒコ]
著・文・その他

内容説明

生きているのか、死んでしまったのか。素子と綾子の身を案じる相馬を乗せた東京発の急行列車は夜を繋いで走り続け、京都、神戸、姫路、岡山―と移り行く風景や車中での会話が彼の心と記憶を写し出す。そして目的地・広島着四・三六分。愛と死、原爆と平和、極限ともいえる人間の姿を斬新ながら、正統的な筆致で描いた歴史に残る長篇。日本文学大賞受賞。

著者等紹介

福永武彦[フクナガタケヒコ]
1918・3・19~1979・8・13。小説家、詩人、仏文学者。福岡県生まれ。東京帝国大学文学部仏文科卒業。1945年、帯広に疎開。47年、加藤周一、中村真一郎と「1946文学的考察」刊行。その後、戦後作家としての地位を築いた。主な著作に「ゴーギャンの世界」(毎日出版文化賞)、「死の島」(日本文学大賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

松本直哉

26
作家はその作品の中で神のように振る舞い、登場人物の運命を掌握しているはずなのに、終盤の三種類の結末(一人が死ぬ、別の人が死ぬ、二人とも死ぬ)はまるで作家の生殺与奪権の放棄あるいは神性の否定かのようだ。それは同時に、時系列の暦の時間や急行列車の発着時間に縛られて、過去から未来に続く一直線を疑わない鼎の時間感覚が、原爆によって一切の時間が無効になり、未来や希望や愛という言葉が意味を持たなくなった素子のそれに敗北したことを意味する。それでもなお言葉を紡ぎ続けようとする鼎の創作への意欲はもはや悪あがきなのだろうか2025/04/08

長谷川透

20
Aから始まってMで終わる“内部”の蠢き、核心に迫っていく予感を孕ませつつも読者をそれから遠のかせながら進行する物語。上巻と変わらぬ小説の構成を保ちながらも、不穏な空気が小説の終わりが近づくにつれて濃くなっていき、次第に息苦しくなっていく。生から始まり、どんな過程を経たとしても誰もが死ぬ。原爆による即死、後遺症による死、あるいは直截的な理由ではないにしても自ら死を選ぶときもある。乱れた時系列、視点を辿ってきたからか、最後に死を見届けてもなお、その後にある何か予感めいたものを感じずにはいられなかった。2013/10/12

風に吹かれて

16
いつも、ではないけれど、毎年、夏の今頃には『核』のことを考えさせられる。広島・長崎に原子爆弾が投下されて73年の年月が過ぎた今でも核弾頭を複数装備したミサイルや通常兵器として使えるような小型核ミサイルが研究されている。本作は73年前の悲惨な事をテーマの一つとしながら、人の俗な面にも焦点を当てつつ、生と死の相克、人間相互の理解・信頼、そして自分自身による自分自身の理解・信頼といったことを、作中小説、登場人物の独白などを駆使して表現している。安易な結末を導かないことで作者の複雑な想いがずっしりと伝わってきた。2018/08/10

sabosashi

11
ストーリー的にも構成的にも解き明かしがたい作品について触れることは容易ではない。  しかし補助線を描くような試みで、拙いながらも、英文、スペイン語文にて要約してみて、ありがたいことにようやく日本文でもなにか綴れるような気持ちになった。  主人公の女性絵描きはヒロシマの地獄を生き抜きはしたものの、そのトラウマからは脱すスことはおろか、終始、囚われ続けている。  そんな負の刻印を刻まれたひとは、復興・成長期のニホンにおいてとりわけ蟻地獄のような様相を帯びる。  2021/07/17

沙織

10
上下読みました❗戦争の文学や映画が苦手で避けてました。この本も怖いところはやや流したけど、相馬、綾子、素子、そして相馬の小説のA子とM子が気になり読み進めました。やっぱり素子が好き。長い髪でタバコを持つ喫み絵を書く姿はカッコいいですね。他は『トゥオネラの白鳥』のRの奥様の言葉が印象に残った。ただ、相馬の『理想の綾子』像は引いた。散々理想を語って「美人ではないが魅力ある」?同じ女性としてちょっと複雑(*_*)翡翠ペンダントを渡されたら私も素子と同じように思うだろうな。 2019/02/07

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