講談社文芸文庫<br> 贋物・父の葬式

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講談社文芸文庫
贋物・父の葬式

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  • サイズ 文庫判/ページ数 315p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784062901727
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

出版社内容情報

私小説作家にして破綻者の著者。彼の死とともに、純文学の終わりとまで言われた。私小説作家にして破綻者の著者。彼の死とともに、純文学の終わりとまで言われた。
その作品群は哀愁と飄逸が漂い、また、著者の苛烈な生き方が漂う。

※本書は、文泉堂書店『葛西善蔵全集』第1?3巻(1974年10月刊)を底本としました。

贋物
呪われた手
遁走
火傷

浮浪
冷笑
姉を訪ねて
本来の面目
父の出郷
朝詣り
不良児

歳晩
おせい
父の葬式
迷信
遺産


葛西 善蔵[カサイ ゼンゾウ]
著・文・その他

内容説明

酒を浴びるように飲み、大正から昭和へと文学とともに短い人生を駆け抜けていった葛西善蔵は、周囲の人間を犠牲にしつつも常に人と密着して生きていかねばならぬ存在であった。表題作はじめ、「呪われた手」「浮浪」「不良児」など、家族と関わりながら、熱情をもって書きあげた十八篇を時間の移り変わりとともに編纂した作品集。

著者等紹介

葛西善蔵[カサイゼンゾウ]
1887・1・16~1928・7・23。小説家。青森県生まれ。1902年頃から上京と帰郷を繰り返す。08年、徳田秋声に師事し本格的に文学を志す。12年、広津和郎らと同人誌「奇蹟」を創刊し、創刊号に処女作「哀しき父」を発表。17年、「贋物さげて(のち「贋物」と改題)」や「雪をんな」を執筆するが困窮のため生活が崩壊するも、18年、「子をつれて」で文壇に認められる。以後、身体を壊しながらも数々の作品を発表した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

長谷川透

20
私的なことをとことん書き込みながらも小説の中に生まれる非私的な要素に私小説という方法の可能性を感じた。私小説という形式を用いながらも、ギミックを含ませて私的な経験を滑稽劇に仕立て上げる西村賢太の作品とは全くベクトルの異なる作品を書く作家ではあるが、私的経験の奥に虚構性が見えてくる点は同じである。そして葛西の場合、虚構性が露骨に見える箇所が多分にあり、この点こそが葛西文学の真骨頂なのだろう。原稿を書くのに四苦八苦した話で以て原稿を埋める作品が本書に収められているが、これは葛西文学を端的に示す作品にも思える。2013/11/19

三柴ゆよし

19
白樺派的な人間肯定、自然讃美を冒頭からことごとく脱臼させる表題作「贋物」がまずは傑作。破滅的な自分語りには終わらない、たしかな技巧が光る作品で、おれは莫迦で愚図でしかたないんですよ、と独り言ちつつも、眼底には黒ずんだ光をたたえている。油断ならない小説である。「文学=人生」とは、日本の近代文学が抱えた根本的な誤りのひとつだが、はっきり言って毒にも薬にもならない作を残した武者小路志賀等のお文学に対して、現今の文学史においては白眼視される私小説群には、いまだ読者を虜にする、あやしげな鬼火がぽつぽつと灯っている。2020/05/09

ハチアカデミー

16
A 息子の万引き事件に振り回される父親を描く「不良児」が傑作。息子の嘘の供述に登場する不良逹を探し求めて村をさまよう姿は、不在のゴドーを待つかのよう。かつてカフカと葛西善蔵を比較した書籍があったが、作家本人が意図していない読みを可能にする、不思議な魅力がある。生活破綻者、酔狂者である作家が、家族を描いた作品を集めた作品集。父、息子への眼差しは優しく・真摯だが、描かれない現実は壮絶・悲惨なものであったと推測される。その負い目を断ち切り、文学作品に昇華してしまう独善性が凄い。覚悟の人、文学する人、ここにあり。2012/09/20

amanon

6
読み進める過程では、作者をモデルにした主人公の身勝手さ、非常識ぶりに辟易させられもしたが、いざ読み終えるとなぜかある種の愛おしさを覚えるのが不思議。やはりこの人は途轍もなく面倒臭い人であると同時に、なぜか人を惹きつける魅力があったのだな…と思わされた。とにかくどんなに陰惨な状況を描いても、どこかに明るさやユーモアが鏤められているのが良い。そしてどんなに経済的に逼迫しても、決して飲酒を止めないというスタンスの徹底ぶりもナイス。しかも、その飲酒癖は父親譲りというのだから筋金入り。こんな人生もありかも?2016/04/16

葛西狂蔵

6
困窮や病理に苦しみ書けないと繰り返し続ける陰惨な作品に、自己韜晦と諧謔を自然に滲ませる。これ、何気に凄く巧い短篇なんだけど。因みに解説にある様な文学的宿命として自ら困窮を受け入れて書いていたとする様な、鶏が先か卵が先か、みたいな話は個人的に興味が薄いのだが、現在に至るまでマニアックな作家扱いなのが不思議でならない。著者の諧謔が西村賢太に拡大解釈されて生きていると考えれば、なかなか愉快ではある。2015/09/03

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