出版社内容情報
1945年8月9日、長崎に投下された原爆によって、絶望が始まった。しかし、長い時間の末に、被爆者たちにも、一筋の光が見えた。
もう悲劇を繰り返さないように。祈りの短篇集
※本書は、『谷間』(講談社刊 1988年1月)『希望』(講談社刊 2005年3月)を底本としました。
雛人形
収穫
ぶーらんこ ぶうらんこ
ほおずき提灯
希望
幸せな 日日
林 京子[ハヤシ キョウコ]
著・文・その他
内容説明
八月九日、長崎で被爆した人たちの苦悩が始まった。生と死の狭間を体験し、未来への絶望との闘いの日々に、彼らは、時の流れで癒されていったのであろうか。自らの足跡を確かめ、振りかえり見つめ続けた著者が、いつかその運命を希望へと繋げていく…。三月十一日を経験した、すべての日本の人々に捧げる林京子の願いと祈りを込めた短篇集。
著者等紹介
林京子[ハヤシキョウコ]
1930・8・28~。小説家。長崎県生まれ。長崎高女卒。父の仕事先である上海で14歳まで暮す。1945年帰国。三菱兵器大橋工場に動員され、勤務中に被爆、爆心地から1.4キロの地点だった。その体験をもとに書いた「祭りの場」で群像新人賞、芥川賞受賞。その後も鎮魂と祈りの作品を中心に執筆。著書に『上海』(女流文学賞)『三界の家』(川端賞)『やすらかに今はねむり給え』(谷崎賞)『長い時間をかけた人間の経験』(野間賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ハチアカデミー
18
長崎にて被爆を経験した作家の晩年作品集。異郷上海での少女時代、引き揚げと敗戦、戦後復興の中での結婚、出産、作家としての活躍、離婚を経てたこれまでの生活が、どこか穏やかで、冷静な筆致で描かれる。本来であれば、戦後日本の歴史として読まれるべき彼女の作品が現代性を帯びてしまったことは幸か不幸か。東海村のJCO事故を題材とした「収穫」の悲哀は、現在の福島の姿である。また繰り返すのか… そんな絶望感が作家を襲ったことは想像に難くない。国も政治も人を守らない。着眼点が違うのだ。だからこそ文学は抗うことが必要なのだ。2014/06/08
Toshi
6
林京子すみません初読。著者は長崎にて爆心地1.4キロ地点で被爆。この短編集も全ての作品にその体験が通底している。どの作品も影があるが読後感は非常に良い、力を持った小説なんだと思う。もっともっと読まれるべき作家。(表題作「希望」の貴子の涼への接し方、ちょっとえっ!と思うんですけど、でもいい作品)2018/02/02
クッシー
2
8月9日、原爆の投下で傷ついた魂と、それから立ち直ろうとする精神を描いた短編。原爆についてショッキングな描写の多い作品を読んだことはある。だが、この林京子の作品群の文章は静謐で、むしろ穏やかな印象さえ受けた。戦争、原爆、大量殺戮。僕がこれらの体験を本当の意味で理解することは、その身にならないと不可能であろう。実際に、悲惨な体験はいつしか忘れられ、人間は同じ過ちを繰り返している。むしろより酷くなっている。となると忘却こそ罪なのだ。そんな著者のメッセージが聞こえてくる、芯の強い作品だった。2021/11/25
gontoshi
2
林さんの短編集です。2020/08/29
星辺気楽
1
淡々と描かれている情景の中に、理不尽な時代を力強く生きていこうとする人々の姿が感銘的。2020/10/25
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- 和書
- 異・信長記