講談社文芸文庫
スフィンクスは笑う

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  • サイズ 文庫判/ページ数 267p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784062901482
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

出版社内容情報

知られざる傑作
安部公房を生んだ幻の名作

大正13年3月、不世出の作家・安部公房生誕の二週間後に刊行された、実母ヨリミによる生涯唯一の小説。恋愛に至上の喜びを見いだす男女五人の愛憎劇は、やがて人間の本質へ迫るドラマへと一変していく。瑞々しい感性と深い洞察力、簡潔で凛乎たる文章――資料的重要性もさることながら、文学性の極めて高い、21世紀の今、さらなる輝きを放つ、幻の名作。

私達の胎内の子供は大きくなって行った。私はそれを思って恐怖に捕えられた。私にはもっともっと、静かな二人の生活がほしかった。しかし、彼は心から三人になる事を喜んでくれた。(略)子供の愛が霧のように私を包む頃には大正十二年も暮れようとしていた。/来年は私達の赤んぼの出来る年だ。/来年は私達の本の出来る年だ。/私達は嘗て春を待った心持で来年を待ち、物思いの無い、希望に輝いた年を、私達の此の小さな家で迎えた。――<「跋」より>

※本書は、1924年3月異端社刊『スフィンクスは笑ふ』を底本としました。

安部 ヨリミ[アベ ヨリミ]
著・文・その他

内容説明

大正一三年三月、不世出の作家・安部公房生誕の二週間後に刊行された、実母ヨリミによる生涯唯一の小説。恋愛に至上の喜びを見いだす男女五人の愛憎劇は、やがて人間の本質へ迫るドラマへと一変していく。瑞々しい感性と深い洞察力、簡潔で凛乎たる文章―資料的重要性もさることながら、文学性の極めて高い、二一世紀の今、さらなる輝きを放つ、幻の名作。

著者等紹介

安部ヨリミ[アベヨリミ]
1899・7・25~1990・7・28。北海道東鷹栖村(現・旭川市東鷹栖)生まれ。東京女子高等師範学校(現・お茶の水女子大学)で国文学を学ぶも、在学中に伊藤野枝、山川菊栄らが結成した社会主義の婦人団体「赤瀾会」のビラを学内に提示し、退学となる。1923年に同郷の医師安部浅吉(1898年生まれ)と結婚、翌24年、公房を出産する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

藤月はな(灯れ松明の火)

81
よくある泥沼スキャンダルと思いきや、人のままならない心情や人生、理想と現実の埋め難い溝への苦悩を鋭く、見据えた作品。書いた人は、何と、安部公房の母なのだ!人々の関係性や心をかき乱す魔性を持つ安子。恵まれた美貌や家柄すらも彼女を守るどころか、窮地に追いやるだけだった。兎に角、安子を心から愛しているのに生理的に「無理」と言われ、報われない一郎氏が可哀想。最後のどう考えても理想を喰い散らかすだけで現実が見えていない男を選んだことに「おいおい、大丈夫かよ・・・」と思っていたら予想通り!うわ、こんな男、いるわ~。2018/03/13

梅村

7
あの安部公房の母親の唯一書いた……という部分を抜きにしても評価されるべき作品だと思います。力強く、且つ自由に生きようとした"お嬢様"のその行く末の破滅を描いた作品としても読めますが、自分は寧ろ、作家になろうとして最後まで作家になりきれなかった安子の姿が印象的でした。(所々安子の手記の形で語られているのには何か意図がありそうです。)著者が、安子の出産によって終幕となるこの物語を息子(=公房)の出産と前後して書き上げ、そして以後筆を折ってしまっている事実には何か象徴的なものを感じてしまいます。2015/03/26

まゆき

6
つらい……奔放な安子がこんな方向に転がっていくなんて読み始めた時は思いもしなかった。安子が野田に対して抱く思いがなんとなく自分の中にある夫への思いに重なって何度も読むのをやめようかと思った。でも最後はきっとなんとかなると思って読み進めた。……つらすぎた。読み終わって何日も立つのにまだつらい。ちなみに解説がとてもよかった。2012/10/27

myung

5
安部公房の母親の小説。平凡な幸福を享受し、変化というものを恐れる道子。自分自身のみならず相手を巻き込み、逸脱していくことで自分の生き方を模索していく安子。前半と後半で主人公が入れ替わるといっていいほどの変化っぷりで、この二人の輪郭がくっきりと描かれているのが印象深い。特に安子については、意図的な誘惑、愛なき愛で道連れを作りながら、作中では決して幸福と呼べるものに達していない(母親としての幸せにも……)のが印象的だが、安子の生き方に何かしら共感をおぼえる人も多いのでは。2012/07/10

龍國竣/リュウゴク

3
凛とした、活発で聡明な女性の生き様が書かれる。道子が主人公として登場し、夫や兄と恋愛論を語る。後半に入ると、安子が中心となり、出産の様子が書かれる。両方に共通しているのが、強い女性の姿である。また、夢が重要な役割を担っている事にも注目したい。2012/03/30

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