出版社内容情報
女性の生き方を鋭く描く自伝的な代表作。 「朱を奪うもの」の主人公滋子の、夫宗像勘次との結婚生活。妻の目から見た愚劣な卑しい男、こっけいなみじめな亭主の典型は、迫力とリアリティーに満ちている。
内容説明
戦争にのめり込んでゆく時代を舞台に、一子の母となった主人公・宗像滋子の打算的な結婚生活の不幸―粗野な夫への憎悪と軽蔑、先輩作家との逢瀬を続けながらも、離婚にも踏み切れない理性と情念の相剋を描く。夫婦とは、家庭とは、愛とは、性とは何かを追求し、「傷のある翼をもった鳥のように生きて、飛ぶことを願った」円地文学の内奥に迫る力作。谷崎賞受賞作『朱を奪うもの』三部作の第二部。
著者等紹介
円地文子［エンチフミコ］
１９０５・１０・２～１９８６・１１・１４。小説家、劇作家。東京浅草生れ。本名富美。国語学者の家に生れ、幼時より古典に親しむ。読本、歌舞伎など江戸文学にも造詣が深い。小山内薫に師事。戯曲集『惜春』刊。のち小説に転じ、「ひもじい月日」で女流文学者賞。著書に『女坂』（野間文芸賞）『なまみこ物語』（女流文学賞）『朱を奪うもの』（谷崎潤一郎賞）『遊魂』（日本文学大賞）ほかがある。芸術院会員（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
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感想・レビュー
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こばまり
50
「朱を奪うもの」に続く第二弾。戦時下に於いても、幼い子供を抱えても、病を得ても自分探しを止めない毒婦滋子天晴れと、TVドラマを鑑賞するような下世話な楽しみ方をしている私が居る。2016/09/15
こうすけ
21
朱を奪うものシリーズ第二部。ついに訪れた結婚生活にも満たされない思いを抱える滋子。セクハラ夫への軽蔑と、愛情ではない不思議な感情がえがかれる。時代は戦争真っ只中。発掘旅行のとこがやけに長く詳しいのはなぜだろうか。一柳、柿沼など、男たちの描かれ方が魅力的だが、小椋との話が特によかった。いけいけ滋子、つぎはいざ混沌の戦後へ。2024/02/14
ソーダポップ
19
自伝三部作二作目。一作目の「朱を奪うもの」よりはるかに楽しく読めた。この芳醇な小説は夫婦の相剋が日常化した結婚生活にしても、慈子の抱える鬱屈にしても、私小説的リアリズムで書けば陰々滅々としたものになるだろう。作者は、私小説の主人公中心の書き方もしていない。滋子が宗像へあびせる苛烈で意地悪な目は、彼女にも向けられる。彼女のみじんもない甘えもない自己批判、自己認識は、一人の知的な内面を抉って読んでる私を惹きつけた。2025/02/24
軍縮地球市民shinshin
11
三部作の二作目。昭和10年から昭和20年の戦後までが舞台。滋子は宗像との子供・美子を己の「自己実現」（今風のフェミニスト的にいうと）のためには邪魔な存在だと思う一方で、そう感じる自分を嫌悪してもあり母と作家との間で葛藤があったようだ。そんな中刑務所で転向して大衆作家として人気を博している一柳と再会し、情交を結ぶ。一柳はいかにも女たらしにしか見えないのだが（モデルは片岡鉄兵らしい）、一度好きになると恋は盲目というが、滋子はかなり入れ込む。一柳との絆を切れさせないように子供が欲しいとまでいう。2023/05/11
バーベナ
4
『虹と修羅』から遡っています。中盤、滋子がどんどん生き生きとしてくるところが、危なっかしい。夫婦生活の影が濃いほどに、別の場所で光り輝くその強さにクラクラしてくる。2016/11/10
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