出版社内容情報
精神医学を根底から問い直す画期的論考。「うつ」は本当に自殺の原因なの か? 健康ブーム、アンチエイジング医学に潜む危険な兆候とは?異常と正常の線引きを歴史的に問い直す、意欲的な書。
内容説明
人間精神の歴史をたどり、精神医学を根底から問い直す“正常”と“異常”の境界はどこか。
目次
序章 異常とは何か?
第1章 異常と正常の倒置
第2章 異常と臨床
第3章 正常の過剰態としての異常
第4章 正常と異常のトポロジー
第5章 社会における異常と正常
終章 正常とは何か?
著者等紹介
小俣和一郎[オマタワイチロウ]
1950年、東京都生まれ。1975年、岩手医科大学医学部卒業。1980年、名古屋市立大学医学部大学院修了。医学博士。1981‐83年、ミュンヘン大学精神科留学。精神科医・精神医学史家。上野メンタル・クリニック院長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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mitei
40
正常と異常の間には何があるのか、自分が異常なのか相手が異常なのか未来から見ると過去の事象は異常なのか色々考えさせられた。中でもアウシュビッツにも囚人用の医療機関があったのも初耳だし、そこから導かれる究極の合理主義的な社会があったということに驚いた。2012/03/10
カザリ
37
当然とされている価値観を疑うという話。特に自殺に関する社会の価値観の転換に関する考察は正鵠。本としては、良心的だけど全体としてインパクトはなかったかなあ。あまり過激ではいということかも。2015/07/19
ふ~@豆板醤
30
4!読友さんからお借りした本。「異常」の定義のために正常という状態の定義からアプローチ。よく新書一冊に収めたなぁという印象。正常とされることでもそれが度を越せば異常になる訳で..。精神病も時代と共に傾向の波があり、異常とは・正常とはという定義にはゴールがないのだろうと思った。単純に多数派だから正しいというのも乱暴な論理だし。たまにこういう広いテーマの本も読むと考えさせられる事が多く、楽しい。2017/07/02
neputa
15
崇拝から排除へ逆転を起こした魔女狩り、正常の極限状態を示したホロコーストなど歴史上における異常の変遷や、現代の異常=精神疾患が発展した経緯など様々な視点で「異常とは何か」を論じている。本来生命は生存のために多様化してきたはずだが、あまりにも拡大した人類は限られた資源化における生存拡大手段として同一化を図る傾向に向かったのかもしれない。そして昨今の「ダイバーシティ」などは行き詰った我々が次なる手段として「そもそもみんな違ってあたり前」の世界に向けて原点回帰を図っているように思う。2016/04/25
neputa
9
社会の価値観が大きく揺らいでるとき、本書を読んできた。今回が3回目。本書は表題の問いについて、知の考古学よろしく歴史を深掘りし、いくつかの時代における「異常」と「正常」を考察する。異常と正常の価値観は時代によって揺れ動き、時に入れ替わりさえする。日本も武士の台頭、明治維新、終戦時に経験したはず。正常、正義、正しさなど我々が思考する概念、価値観は常に揺らいでいる。言葉の表記は変わらずとも、その中身については何ら普遍的ではないことを本書を通じ、確認するのである。2025/04/23