内容説明
飛行機の誕生が戦場を変えた!気球からの爆弾投下から絨毯爆撃、原爆投下まで。
目次
第1章 第一次大戦ではじまった無差別爆撃(気球からの空爆;飛行機と飛行船の登場 ほか)
第2章 イギリスの無差別爆撃思想(ジュリオ・ドゥーエによる戦略爆撃の体系化;他国に広がるドゥーエ理論 ほか)
第3章 アメリカと空爆(第一次世界大戦でのアメリカの経験;アメリカ空軍と「精密爆撃」 ほか)
第4章 第二次世界大戦下のヨーロッパ(徐々に瓦解した相互自制;ワルシャワ空爆 ほか)
第5章 日本空爆と原爆投下(最初の日本本土空爆とお粗末な防空政策「隣組」政策 ほか)
著者等紹介
田中利幸[タナカトシユキ]
広島市立大学広島平和研究所教授。西オーストラリア大学にて博士号取得。オーストラリアの大学で教員を長く務めた後、敬和学園大学教授を経て現職。第二次大戦期における戦争犯罪の比較分析を研究テーマとしている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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skunk_c
67
主に戦略爆撃について、その思想と実際について、もっぱら第2次世界大戦までの、いわゆる連合国(イギリス・アメリカ)を主な対象にして考察している。イギリスの場合は戦間期も植民地統治の手段としてイラクなどで無差別爆撃を多用しており、「恐怖を与えれば戦争は終わる」という理屈(これが成り立たないことを著者は厳しく批判している)による。これに対しアメリカは戦間期に「精密爆撃」の技術と理論を生み出し、第2次大戦のヨーロッパでそれにこだわったが、それは不可能な「机上の空論」であり、無差別爆撃への移行は必然的としている。2021/09/23
たくのみ
12
ドッグファイト、名機の性能、カッコいいフォルム、そんなものは一切出てこない。本当の空の戦争とは、いかに効率よく、数多くの爆弾を敵の陣地に落とすのかが本質。気球の時代から、そこにいるのが敵の基地でも住宅でも農地でも、被害を与えればいい。無差別攻撃こそ空の戦争の本質。空爆は「最終的には、経済的で人道的だ」精密さが向上し、無人機でリスクは減った。しかし、無差別攻撃による民間人の死者は増え続ける。原爆投下に象徴される「空の戦争」は大量殺人と同意語だと感じた。2016/06/03
無重力蜜柑
11
タイトルが不正確で、実際は20世紀前半の空爆の歴史についての本。ハーグ陸戦条約、標的を絞った精密爆撃などの抑制的な思考が、戦争が長引くごとにタガが外れていく様子が描かれる。戦間期のイギリス空軍が中東やアフリカの植民地での反乱鎮圧で、空爆や自軍の有用性を証明しようとしたというのは初めて知った。技術的に到底不可能な「精密爆撃」を自分たちの戦争のスタイルとして喧伝し、「付随的損害」を出しまくるアメリカのやり方は現代の対テロ戦争を思い出させるが、WW2、朝鮮、ベトナムが葬った思想を技術が復活させたという感じか。2022/06/01
左手爆弾
7
「空の戦争史」という表題だが、一貫して「戦略爆撃」が主題となっている。広島・長崎への原爆投下は戦略爆撃の究極形と言えるだろう。普通に考えれば無差別に民衆を殺害するこうした爆撃は忌避されそうなものだが、なぜ今日に至るまで正当化され続けているのか。それを戦略爆撃に関する思想史から読み解いていく。気球や飛行船、初期の飛行機などは飛行能力が十分ではなかったため、空爆の効果は決して高いものではなかった。戦略爆撃が問題になるのは、長距離飛行が可能で、爆弾を大量に搭載できる大型の飛行機が出現してからである。2019/03/11
悠里
5
空襲を被害者側の目で学び、空爆を飛行機に焦点を当てた目で今まで学んできたが、この本を読んで空襲と空爆の視点がどこか切り離されていたということに気がつくことができた。兵士ではない一般市民の命を奪うことは近代に入ってからの戦争形態であり、そのことに関する倫理観は戦争という名の前に無視されることが多々ある。それは現在にも続いていることだろう。敵国に早く白旗を挙げさせたいから市民へのより悲惨な攻撃を行う、その考え方は非人道的すぎる。戦争は人を盲目にさせると改めて感じた。2020/02/06