出版社内容情報
十四世紀中頃、因幡の国・智土師郷の村民は、厳しい年貢の取り立てに貧窮の生活を強いられていた。村を豊かにしようと吾輔は、村の特産物渋柿に目をつけ商売を軌道に乗せる。そこに村の繁栄に目を付けた、悪徳武士の一味が帰ってくる。智土師郷に桃源郷の理想をみる鎌倉から来た光信や、蒙古の捕虜の子孫義平太とともに、吾輔は村の防衛のため戦うことを決意する。村勝利頼みの綱は、弓兵器の「弩」農民と武士の一騎打ちが始まる。
内容説明
南北朝の時代、高い年貢で貧窮にあえぐ因幡国・智土師郷。吾輔は特産の渋柿で商いを起こし、一転、村は富むが、その富を奪取せんと武士集団がたびたび村を襲う。この地に桃源郷の理想を見る僧侶の協力を得て結束する村。勝利を呼び込む頼みの綱は、村にもたらされた新型弓兵器「弩」。壮絶な闘いがいま始まる。
著者等紹介
下川博[シモカワヒロシ]
1948年生まれ。早稲田大学卒業。脚本家。テレビ脚本に「武蔵坊弁慶」(1986年・NHK)、「はやぶさ新八御用帳」(1993年・NHK)、「中学生日記」(NHK名古屋)など多数。小説には、2006年・第18回堺自由都市文学賞受賞作の「閉店まで」(2006年8月読売新聞大阪版掲載)がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
海猫
132
表紙や内容紹介を見ると時代活劇風だし、実際最終的にそうなる。さらには生きる喜びの描写が素晴らしい。シンプルで力強い。知ること学ぶこと考えること、理想と夢を持つこと、苦心し努力すること、愛し愛されること、助け合うこと、互いに豊かになること等々。時には些細なことがページを繰るごとに積み重なっていき、ダイナミックなものになっていく。こうした過程は人生の幸福に思いを馳せるし、さらには読書の快楽だともいえよう。時代の奔流に押し流されるからこそ、つかの間の幸せが尊いし、ときに人は武器を取る。この虚無感がまた哀しい。2016/10/12
BlueBerry
50
全体の感じで言うと黒澤明監督の「七人の侍」みたいな感じです。序盤は金儲けの話しで後半が盗賊との戦いとゆー感じですね。商売の話も弱者が無法者をやっつける話も好きなので基本的には楽しめました。欲を言えばラストはもう少し工夫が欲しかったと思ったくらいでしょうかね。序盤◎中盤◎ラスト○2014/03/22
goro@the_booby
34
爽快!柿渋を流通させて苦闘する吾輔。経済小説のような1部と村に危機が訪れ奮闘する2部。聡明な娘の澄に継母の小萩の女性陣が生き生きしてる。これから社会へ出て行く人たちに読んで欲しい物語ですね。商いとはの姿勢を感じることが出来ると思う。柿渋って初めて知ったかも。昔の人の知恵って凄いわ。「弩」は受け入れられなかったけど「鉄砲」は大流行。この差は扱い難さか。2016/02/07
衛兵
14
時代は鎌倉末期から南北朝。舞台は因幡国の寒村。ここに相模国称名寺の荘園「智土師郷」があった。名産の柿渋で商売を始めようとする百姓、遠く鎌倉から来て村を桃源郷にしようとする僧侶、学問を志す娘とその義母である異国の血を引く女。これまで定型化していた中世農村とは随分違う、生き生きとして、自由な世界だ。2015/09/30
かきたにたくま
12
南北朝時代を舞台にした経済小説でありアクション小説でもある一冊で二度楽しい本。光信の最後がちょっと哀しい。2014/07/16
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- 和書
- Kaworu 角川文庫