講談社文庫<br> 海と毒薬 (新装版)

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講談社文庫
海と毒薬 (新装版)

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  • サイズ 文庫判/ページ数 232p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784062769259
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

出版社内容情報

彼はなぜ生きたままの人間を解剖できたのか? 実際に起きた事件を通して、神なき日本人にとっての“罪の意識”を問う不朽の名作我々日本人はもう一度問い直さなければならないのではないだろうか。
「神を持たない日本人」とはなんであるか、ということを。――夏川草介<解説より>

生きたままの人間を解剖する――戦争末期、九州大学附属病院で実際に起こった米軍捕虜に対する残虐行為に参加したのは、医学部助手の小心な青年だった。彼に人間としての良心はなかったのか? 神を持たない日本人にとっての<罪の意識><倫理>とはなにかを根源的に問いかける不朽の長編。解説:夏川草介

海と毒薬
年譜


遠藤 周作[エンドウ シュウサク]
著・文・その他

内容説明

生きたままの人間を解剖する―戦争末期、九州大学附属病院で実際に起こった米軍舗虜に対する残虐行為に参加したのは、医学部助手の小心な青年だった。彼に人間としての良心はなかったのか?神を持たない日本人にとっての“罪の意識”“倫理”とはなにかを根源的に問いかける不朽の長編。

著者等紹介

遠藤周作[エンドウシュウサク]
1923年東京都生まれ。1948年慶應義塾大学仏文科卒業。1950年カトリック留学生として、戦後日本人初めての渡仏、リヨン大に学ぶ。1955年『白い人』で第33回芥川賞受賞。1958年『海と毒薬』で新潮社文学賞・毎日出版文化賞、1966年『沈黙』で谷崎潤一郎賞、1980年『侍』で野間文芸賞、1994年『深い河』で毎日芸術賞を受賞。また狐狸庵山人の別号をもち、「ぐうたら」シリーズでシャレ、ユーモア作家としても一世を風靡する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

むーちゃん

151
もっと残虐な描写等あるかと思いましたが、そこまでではなかった。「沈黙」読了後だからなのかなと。倫理観等が麻痺したこと、日常的に死になれすぎたこと、宗教感の欠如、いろいろ考えさせられました。 続編がありそうな終わり方で、ちょっともの足りませんでした。 2020/02/18

rico

115
捕虜生体解剖事件を通じて神を持たない日本人の「良心」の有り様を問う問題作、というのが本作の一般的評価だろう。保身と出世に走る上司、サイコパス的同僚、信仰の下迷いのない女性などの存在が、逡巡しつつも流されていく主人公の根無し草的心性の危うさを際立てさせる。だがどうだろう。よって立つもの自体が誤っていたら?有史以来どれだけ多くの命が神の名のもとに失われたか。命を救うべき医者の故の罪深さ。そうかもしれない。だが空襲や原爆で焼き殺すのと、切り刻んで死に至らしめるのと、どこが違うのか。わからなくなる。2021/08/27

やいっち

105
過日、石井部隊関連の本(青木 冨貴子著『731―石井四郎と細菌戦部隊の闇を暴く』)を読んで、本書のことを知った。知ってはいたが、題名だけ。「九州大学附属病院で実際に起こった米軍舗虜に対する残虐行為」を巡る本とは知らなかった。本書が刊行されたのは、一九五八年。当時は日本人にはあまり知られていなかった陰惨な事件を世に知らしめた小説で、衝撃的だったようだ。2022/04/11

ケンイチミズバ

98
人間は神ではない。理由があれば殺してよいと判断できるのでしょうか。良心の呵責とは神に向けた心の迷いや動揺なのでしょう。無差別爆撃を行ったB29搭乗員捕虜はどうせ処刑されるのだから。医学の進歩のため、学部長選挙で軍部の応援は票に繋がる、むしゃくしゃしていた、どうせ戦争で日本はなくなる、自分にはない女の幸せに輝く人を苦しめたかった、医師や助手、看護婦一人一人の言い訳がおぞましい。生体解剖されることを知らない米兵は検査だと信じベッドに横たわるが、麻酔をかけられ抵抗する。全員で抑え込み眠らせた。殺人に違いない。2022/07/26

★Masako★

95
★★★✰︎これはかなり重かった…。戦争末期、実際にあった九州大学附属病院での米軍捕虜への生体解剖事件を題材に、罪の意識とは良心とは?を宗教的な面から問いかける。「みんな死んでいく時代やで。病院で死なん奴は毎晩空襲で死ぬんや」死が身近にあり、どうせ死ぬなら医学の為にと、私利私欲を絡めつつ患者や捕虜を実験台にする医師たち。生体解剖に笑いながら立ち会う軍人…。宗教云々というより、やはり戦時という特殊な状況が、良心も罪の意識も飲み込んでしまったような気がする。悩み苦しみ疲弊していく研究生・勝呂の姿が痛々しい。2020/08/14

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