出版社内容情報
江戸の酷薄な世相と人情を捕物帳風に描破 爛熟の気配色濃い風俗の陰に生まれる不気味な犯罪のからくりに鮮やかな推理の光をあてた時代ミステリー六編。仮借ない浮世とやりきれない人情の襞を縫う傑作。
内容説明
退廃が翳を落とす江戸市井の片隅に、人知れず生きる男と女。色と欲、そして仮借ない世相が時にやりきれない犯罪を呼び起こす。残忍な手口で殺された乱暴者の遺体から、意外な犯罪のからくりと、その憐れな動機が浮き彫りになる「大黒屋」など、芳醇な情緒と狂おしい哀感を湛えた傑作時代ミステリー六編。
著者等紹介
松本清張[マツモトセイチョウ]
1909年福岡県に生まれる。朝日新聞西部本社広告部をへて1952年に発表した『或る「小倉日記」伝』で第28回芥川賞を受賞。1956年頃から推理小説を書き始める。1967年、『昭和史発掘』など幅広い活動により第1回吉川英治文学賞を受賞。1970年に第18回菊池寛賞を受賞。現代社会をえぐる鋭い視点と古代史に始まる深い歴史的洞察で幅広い読者を得、日本を代表する作家でもあった。1992年8月、逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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シュラフ
20
松本清張の時代小説短編集。どれもなかなかすごい出来栄えの作品ばかりである。特にすごいと思ったのが「山椒魚」。疱瘡が流行して親たちが戦々恐々となった弱みにつけ込み、山椒魚を拝めば厄除けになると荒稼ぎする男。定宿の木賃宿に戻ると稼ぎのいいことをかさに着て乱暴狼藉を繰り返す。男が目をつけたのは病の亭主を抱えて難渋する色っぽい人妻。金にあかせて人妻をものにしようとする男に対する反撃がはじまる・・・。江戸の街のとある木賃宿を舞台にした人間ドラマとして読み応えは十分。社会派といわれる松本清張の作品の文学性を感じる。2015/04/21
三平
12
松本清張の時代小説短編集。 著者お得意のミステリ&犯罪小説なのだが、岡本綺堂の作品を彷彿とさせる味わいがある。 悪い奴らが何とも人間臭く、愚かで魅力的な人間模様が繰り広げられていく。江戸の文化風習の描写も含め、半七捕物帳を意識して書いたのではないだろうか。短編だけど、それぞれ満足感がある読み応え。 本当にどれも面白かった。時代小説というイメージがあまりない作家だがこれは掘り出し物。オススメです。2017/04/19
Kira
11
図書館本。時代ミステリ六篇収録。こんなに濃厚な時代ミステリを読んだのは初めてかもしれない。骨太な文体にぐいぐいと引かれるように読んだ。人の欲が生々しく迫ってくる。生々しいといえば、「山椒魚」で山椒魚を切り刻んで串焼きにする描写が特に生々しかった。2022/07/07
ko-sight
6
大山登山した後、TVドラマで「大山詣で」を見て、原作を読みたくなった。ミステリー仕立ての時代劇だが、江戸の市井を感じてよかった。2019/01/27
あいちょ。
5
時代ミステリー六編。 大山詣で、女義太夫が個人的には好き。 でも、全部面白い。 江戸切絵図の実物も興味が湧く。2012/06/04