内容説明
31歳になった。遠距離恋愛中、年下の彼は何も言ってくれない。不安を募らせて、彼の住む町・稚内をこっそり訪れた真穂子は、地元の人たちの不思議なパワーを浴びて、なにやら気持ちが固まっていく―。三十代独身女性のキモ焼ける心情を、軽妙に描いた小説現代新人賞受賞作を含む、著者の原点、全五編。
著者等紹介
朝倉かすみ[アサクラカスミ]
1960年、北海道生まれ。北海道武蔵女子短期大学卒業。2003年「コマドリさんのこと」で第37回北海道新聞文学賞、’04年「肝、焼ける」で第72回小説現代新人賞、’09年『田村はまだか』で第30回吉川英治文学新人賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おしゃべりメガネ
219
北海道出身の朝倉さん作品で『田村はまだか』以来かと。表題作が秀逸で、31歳の女性主人公が北海道は北の果て稚内まで年下の彼氏に会いに行くというお話です。なかなか稚内を舞台にした作品はあまり記憶になく、たまたま自身が今夏稚内に旅行に行ったので、少しばかり不思議な縁を感じてしまいました。他の作品でも道北の豊富やサロベツという地名が出てくるので、なかなか興味深く読み進めました。どこかちょっとクセのある女性キャラを主人公にした短編集ですが、女性読者さんにはオススメかなと。少し辛口な作風がなんかハマると思いますよ。2017/10/28
いたろう
82
朝倉さんのデビュー短編集。20代からアラフォーまで、すべて独身女性が主人公の5編。中でも、稚内が舞台の2編がいい。東京から稚内に転勤した男性を訪ねてきた31歳のわたしの話「肝、焼ける」。アラサー女が、7歳も年下の男を相手に、恋人と言っていいのかどうか、微妙な関係。銭湯で、わたしの話を聞いたおばさんの、「あー そりゃキモ、焼けるわ」という言葉が妙に心に残る。もう1編は、医師と結婚して、今は稚内にいる友人に誘われて、札幌から稚内の南の豊富温泉に来た話「一入」。傷心旅行も兼ねてのはずが・・・。ラストが清々しい。2020/05/01
鍵ちゃん
49
デビュー作。31歳になった。遠距離恋愛中、年下の彼は何も言ってくれない。不安を募らせて、彼の住む町、稚内をこっそり訪れた真穂子は、地元の人たちの不思議なパワーを浴びて、何やら気持ちが固まっていく。30代独身女性のキモ焼ける(じれったい)心情を軽快に描く。最初は主人公に寄り添えなかったが、次第に応援したくなり、また女性のパワーがかえって居心地の良く感じられた。この作品は男性からしたら分かりづらいかもしれないよ。2025/02/01
はつばあば
42
思っていたのとちょっと違いましたので、本の表題のみ読了。一番下の妹・春季カタル・コマドリさんのこと・一入 後日読了させてもらいます2022/09/26
エドワード
32
稚内へ転勤した煮えきらない恋人。東京から会いに来た真穂子。銭湯で地元の人に二人の行方の不安を語る標題作。肝は心だ。ちむどんどんと同じだね。会社勤めの女性たちを描く「一番下の妹」「コマドリさんのこと」。営業も出世も関係ない彼女たちの関心は、女性同士の人間関係や男女関係のみだ。他人のことばかり気になる、心模様の表現が鮮やかすぎて苦しいほどだ。朝倉さん、上手すぎるよ。独身と既婚の同級生が温泉宿で語る「一入」。こちらも煮え切らない恋人に肝焼けている。どの章も最後は女性たちの心が走り出す。背中を押してあげたいね。2022/09/08