出版社内容情報
すべての謎は、あの山に 渾身の山岳ミステリー
新田次郎賞受賞作
世界のクライマーから「ホワイト・タワー」と呼ばれ、恐れられた山がある。死と背中合わせの北壁を、たった一人で制覇した天才クライマー。その偉業に疑問を投じる、一編のノンフィクションに封印された真実とは……。表題作の他に「黒部の羆(ひぐま)」「雪の慰霊碑」を収録。新田次郎文学賞を受賞した山岳ミステリー集。
真保 裕一[シンポ ユウイチ]
著・文・その他
内容説明
世界のクライマーから「ホワイト・タワー」と呼ばれ、恐れられた山がある。死と背中合わせの北陸を、たった一人で制覇した天才クライマー。その偉業に疑問を投じる、一編のノンフィクションに封印された真実とは…。表題作の他に「黒部の羆」「雪の慰霊碑」を収録。新田次郎文学賞を受賞した山岳ミステリー集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
じいじ
117
『ホワイトアウト』で虜になった真保裕一。本作は優れたノンフィクションや山岳など自然界を題材にした作品に贈られる「新田次郎文学賞」の受賞作。山岳小説3作の中編、どれもハイレベルの傑作だ。面白い。北アルプス剣岳を舞台にした【黒部の羆】主人公・ヒグマこと樋沼の山岳警備隊一筋の生きざまに魅了させられた。ヒマラヤ山脈の7,981mの北壁に挑む【灰色の北壁】の迫力に圧倒された。一人の女を一途に愛した二人の山男の対峙に隠された謎に引き込まれる。つぎの真保作品、何を読むか?迷うが、楽しみだ。2017/01/26
モルク
102
山岳小説3編。冬山の氷壁で滑落しロープで宙吊りとなっている遭難者を元救助隊で今は山小屋の主人が救助に向かう。彼も以前似た経験をしその心の傷が今も…の「黒部の羆」がとてもよかった。選ばれた友への嫉妬、なんとか貶めようとする策略そこに臨場感溢れる冬山のシーンが重なる。「灰色の北壁」は世界のクライマーの夢を叶えた天才が死んだ。彼の登頂の疑惑と最後に明かされる謎解きが絶妙。3作とも山に挑む者の情熱、山のそして自然の厳しさがビンビンきた。根性なしの私にはとても無理。2023/09/07
サンダーバード@永遠の若者協会・怪鳥
97
何れも雪山を舞台とした中編の山岳小説。夏山の縦走ばかりで雪山の経験が全く無いのにこんな事を言うのもおこがましいのですが、どれもリアルで良かったです。特に表題の「灰色の北壁」が素晴らしかった。ヒマラヤの未踏の北壁制覇を巡る疑惑とそこに隠された真実。山岳ミステリとして読んでもも一級品だと思いました。★★★★2013/11/04
ジュール リブレ
89
山岳小説オススメをお聞きした中で出てきた一冊。読友さん、ご紹介ありがとうございました。中編3つ、読み応えバッチリ。『ホワイトアウト』で鮮烈なデビューされた真保裕一さんの面目躍如、スリル満点な一冊でした。表題作の『灰色の北壁』に隠されたトリックやレトリックは本格的だし、冒頭の『黒部の羆』も巻末の『雪の慰霊碑』も、一ひねりが効いたストーリー。山岳小説ならではの手に汗握る展開とあわせて一気読みでした。それぞれのラスト、ハッピーかどうかの意見は分かれると思うけど、人生を変えようと言う意思を感じる作品です。2021/07/15
タイ子
67
酷暑の頃になるといつも誰かの極寒の山岳小説を読みたくなる。せめて本の中だけでも涼を求めていたい。そこにミステリー要素が加わるから面白い。さらに背筋も凍る幽霊さんが出ると…出ないけど。3つの短編集からなる本作。25年前の冬山登山での事故と現在とを上手くシンクロさせる作品とか、世界でも有数のクライマーしか制覇していない北壁に立った日本人は本当に制覇していたのか?神が守る山の頂に人は何を求めて登るのか。そこには、憎悪、嫉妬、欲望、許しを乞いに登る者も。雪と氷の絶壁を想像しながらミステリーを解くのも涼の一環かも。2018/07/13
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