内容説明
十二の深い傷跡を全身に刻んだ女のこと。少年に悪戯され暗転した小四の夏のこと。五角形の部屋で互いの胸の奥に封じ込めていた秘密を明かしたとき、辿り着くのは―急逝を惜しまれた著者最後の作品集。まさに着手寸前だった長編『群生』のプロット200枚も収録!野沢ミステリーが目指した高みが迫る。
著者等紹介
野沢尚[ノザワヒサシ]
1960年、愛知県名古屋市生まれ。日本大学芸術学部映画学科卒業。1983年第9回城戸賞受賞。1985年テレビドラマ「殺して、あなた」で脚本家デビュー。以後テレビ、映画で活躍。1997年『破線のマリス』で第43回江戸川乱歩賞受賞。同年『恋愛時代』で第4回島清恋愛文学賞受賞。1999年テレビドラマ「結婚前夜」「眠れる森」で第17回向田邦子賞受賞。2001年『深紅』で第22回吉川英治文学新人賞受賞。2005年「砦なき者」のテレビドラマ脚本などで第29回エランドール賞特別賞受賞。2004年6月28日急逝。享年44(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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じいじ
49
野沢尚の遺作。短編2作と長編「群青」の筋書が収録。脚本家から作家に転身した野沢尚は、サスペンスから恋愛モノまで多彩な技をもつ作家だった。自害は惜しまれる。表題作「ひたひたと」は、39歳10か月の主婦が主人公のサスペンス。すごすぎる結末のストーリーで実に面白い。「十三番目の傷」は男のズルさが描かれている。筋は面白いがホラーの領域の話。戦慄が走るこの手は苦手である。未完成「群青」は面白い。残念の一語に尽きる。「生きることは死ぬこと。死ぬことは、人々の心の中で生き続けることだ・・」北方謙三の弔辞が心に沁みる。2015/02/10
たぬ
41
☆4 残る二人の性もゆがんでいるのだろうか? ホストがこの会を催した真の目的は? 完成していたらきっと読み応えたっぷりのものが出来上がっていただろうから急死は本当に残念。併録された『群生』のプロットもこれほとんど完成してるよね? という高レベルなもの。悲しみと切なさが深い。2021/05/30
minami
25
哀愁と寂寥感が作品全体に漂っています。 野沢尚先生は人間の光と闇を描く、孤高の天才作家でした。 ひたひたと真実に迫りくる、サスペンスホラー、ラストの誕生プレゼントは衝撃です。いい作品は時を経ても色あせないですね。 2017/03/14
詩界 -うたか-
21
#読了 #野沢尚◆私の話を始めましょう――「秘密の友人」というHPをクリックした経緯について。私が出会った女性・佐和子には驚くべき傷があったのです。それも、多くの【十三番目の傷】息子の有平から久々の電話がかかってきた「僕が生まれてきたのは間違いだったのかな」といい自殺してしまう。自殺に追いやられたのはなんだったのか。そして一本のビデオテープが届けられた【群生】連作の未完。そして途切れ途切れのプロットと書かれた小説。虜になるほど面白いのに完全版が読めないことが歯がゆい。ラストから手紙のシーンを読み返した2020/02/06
ぱどり
19
とてもドラマティック!2018/01/21