出版社内容情報
短編の名手が綴る 哀しく愛しい男と女
貧しくも、明日への夢を持って健気に生きる女。深い心の闇を抱えて世間の片隅にうずくまる博徒。武家社会の終焉を予感する武士の慨嘆。立場、事情はさまざまでも、己の世界を懸命に生きる人々を、善人も、悪人も優しく見つめる著者の目が全編を貫き、巧みな構成と鮮やかな結末とあいまった魅惑の短編集。
藤沢 周平[フジサワ シュウヘイ]
著・文・その他
内容説明
貧しくも、明日への夢を持って健気に生きる女。深い心の闇を抱えて世間の片隅にうずくまる博徒。武家社会の終焉を予想する武士の慨嘆。立場、事情はさまざまでも、己の世界を懸命に生きる人々を、善人も、悪人も優しく見つめる著者の目が全編を貫き、巧みな構成と鮮やかな結末とあいまった魅惑の短編集。
著者等紹介
藤沢周平[フジサワシュウヘイ]
1927年、山形県生まれ。’73年「暗殺の年輪」で直木賞を受賞し人気作家になった。’86年「白き瓶」で吉川英治文学賞、’90年「市塵」で芸術選奨文部大臣賞。’97年、69歳で死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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じいじ
94
藤沢さんの傑作8短篇を収めた一冊。恋人の父親の冤罪を晴らす物語【冤罪】や【暁のひかり】など既読の作品もあったが、どれも粒ぞろいで面白い。私の一番のお気に入りは、27頁で今ひとつ物足りなさへの不満が残ったが、表題作の【雪明かり】が断然好きです。世間体に縛られる武士の家柄の古い掟を破って、若い武士の一途な恋への決心と、将来への野望を貫く話です。間違いなく、また読みたくなる一篇です。2021/08/03
yoshida
88
藤沢周平さんの短編集。武家モノと市生モノで構成。どの作品も趣きあり楽しみつつ読了。標題作である「雪明かり」。高禄の家に養子となり、実家と交渉の絶えた菊四郎。血の繋がらない妹由乃の病を知り、運命が動く。養子先を捨て江戸に飛ぶ菊四郎。最後の雪明かりの描写が、目に浮かぶように鮮やかであった。「潮田伝五郎置文」は物悲しく趣がある。軽輩の家に生まれた伝五郎。喧嘩を切っ掛けに上士の娘七重を知る。断ち切った筈の七重への思慕。七重との再会と醜聞。それは伝五郎をある行動へと導く。人の想いの儚さと哀しさ。魅力ある短編集。2023/02/19
ALATA
82
藤沢さんの市井物と武家物が交互に綴られる短編集。江戸時代の庶民の暮らしぶりがいつもながら鮮やかに描かれていい感じ。そして、武家社会の底で生きるサムライの矜持が息苦しい処も読みごたえがありました。想い人のために奔る「潮田伝五郎置文」、助けられた娘に恩義を感じるちんぴらの竹次郎「恐喝」、娘のためにろくでなしの父親が一矢報いる「入れ墨」が好み★5※「私は婿をもらう身です」明乃の言葉に頬がゆるむ源次郎。「冤罪」は珍しく心が和む物語でした。2025/04/18
s-kozy
81
人生は思い通りにはならぬもの、だからこそ生きることに価値があるのかもしれない。かと思えばふとした出会いがいい結果をもたらすこともある。かくも人生はままならぬ。八編からなる藤沢周平らしさ満載の短編集。新装版で1ページあたりの字数が少なく、読みやすくなっている。2016/11/09
goro@the_booby
66
お天道様に背を向けて生きるしかないやくざな男が出逢った小さなひかり。そのひかりを守るために立ち向かうのだが道を踏み外した者の行き着く先は、やはり暗い道なのか。切ない短編のなか、明るいお薦めは、いつも遠くから見つめていた娘の行方が知れなくなり必死に後を追う「冤罪」が爽やかでいい。新潮文庫にも収録されてたね。藤沢は最高です。【海坂藩城下町 第2回読書の集い】イベント参加中。2016/11/30