内容説明
好きな男の全てはいらない。―離婚して二人用の家具が居心地悪くなった頃、ピアノを預かることになった。百年前のフランス製、燭台付き。元クラスメートの槇野と親密になりながらも、執着はしない日々に、ピアノは変化をもたらすのか?野間文芸新人賞作家がぎこちなく生きる女の愛しさを描いた全二篇。
著者等紹介
平田俊子[ヒラタトシコ]
詩人・劇作家・小説家。1983年『鼻茸について』などで第1回現代詩新人賞を受賞。詩集に『ターミナル』(晩翠賞)『詩七日』(萩原朔太郎賞)などがある。小説集『二人乗り』で2005年度野間文芸新人賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ユカ
52
こころの奥にあるわたを、表面にふわりと浮かせるような瞬間が、物語のなかにときどきあって、それが残酷な感じがする本でした。こころの奥を探って、自分と向き合うことが苦手なわたしにはとても斬新。寂寥感がずっと漂っていて、読んでいる間は気持ちが沈んでしまうけれど。もう一人の自分のことをみているような感覚のする一冊です(自分の人生とは全然違うのだけど)。嫌いじゃない。たまにこういう本を読みたい。2015/10/19
あんこ
22
クラフト・エヴィング商會が装丁を手掛けているのと、題名に惹かれて読んでみた。二編共、淡々としているのに読了後は形容しがたいザワザワとした気持ちに陥りました。不安定さや不穏さが行間に垣間見えます。2014/09/29
ほむら
16
「ピアノ・サンド」「ブラック・ジャム」そのどちらも、読み終わったときの余韻に違和感がありました。読後感が悪い、というよりは、キウイ食べたあとに口の中にイガイガが残っている感じです。著者は詩人でした。文の作り方が、小説家でないのが新鮮でしたが、中身はひたすら淡々としています。かといってさっぱりしているわけではないです。読後の少し暗い感じは、作者の人生が少し映し出されているのかなと感じました。電車や、雛人形や、ピアノが怒ったり悲しんだり、モノが抱える思いの表現や、それを可哀想に思ったりする描写が好きでした。2013/12/16
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8
どうも友達が100年前のピアノを、無料で譲るよと言うから、主人公の女の子はピアノもらってもいいかなあ、などと考える。 ピアノ、それは幼い頃の憧れであり、不倫相手の男の家にある(=幸福な家庭にある)シンボルであってだんだんマジで欲しくなってくるんだけど、ピアノ、来なくなっちゃうのよね。で来なくなったピアノに会いにカフェに行ったら100年前のモンだからボロボロだし傷もあるし、なんだか寂しそうに見えてそこに『自分を見る』。とまあ、こんな話がなんでもないような、言葉で書かれていて、それが良かった。2020/05/20
まきろーる
6
「インヘルノ」で引用されていた詩が印象的で他の作品も読んでみたくなり、図書館で見つけた一冊を借りました。淡々としているのだけれど、詩を初めて読んだ時と同様にぞくっとしました。日常の中にふっと顔を出す暗いものが表されているなと思いました。あまり目を向けたくないけど知っていて触れるとちょっと心地いいみたいな感触でした。あとがきも良かったです。あとサンドイッチが無性に食べたくなり、本まで買ってしまいました。。2015/08/04