内容説明
「誘拐犯の娘が新聞社の記者に内定」。週刊誌のスクープ記事をきっかけに、大手新聞社が、20年前の新生児誘拐事件の再調査を開始する。社命を受けた窓際社員の梶は、犯人の周辺、被害者、当時の担当刑事や病院関係者への取材を重ね、ついに“封印されていた真実”をつきとめる。第49回江戸川乱歩賞受賞作。
著者等紹介
赤井三尋[アカイミヒロ]
1955年、大阪府生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、ニッポン放送に入社。小説は30代半ばから書きはじめ、文學界新人賞や江戸川乱歩賞で予選を通過した経験もある。’03年、『翳りゆく夏』で第49回江戸川乱歩賞を受賞。’06年フジテレビに転籍(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
三代目 びあだいまおう
301
まさか!鳥肌が立ちました!予想などできるはずない驚愕の展開!生後間もない赤ちゃんが病院でいなくなった。誘拐犯は身代金の受け取りに成功したが直後に逃げる車ごと崖から落ち死亡。赤ちゃんの生死や行方もわからぬまま捜査は終幕。20年が経ち、誘拐事件の犯人の娘が優良一流企業の新聞社に内定し、その背景が雑誌にリークされる❗ふとした鶴の一声で当時の誘拐事件を再調査する元記者の梶!過去の関係者達に地を這うように当時の話を聞いてゆく梶!やがてたどり着く驚愕の真実❗ずっと積んでた本書だが改めて思う。積ん読は宝の山だね‼️🙇2019/02/28
しんたろー
201
赤井三尋さん初読み。20年前の新生児誘拐事件を再取材する窓際新聞社員・梶を中心にしたミステリは、地道ながらリアリティある展開で、この手の王道と言える作風…身代金受け渡しシーンは緊迫感があって惹き込まれたし、丁寧に真実を追う梶にも「地に足の着いた」推理小説という印象で好感。梶の上司や新聞社社長など周囲数人の心情も巧く描いていて群像劇的要素を大いに楽しめたが、肝心の梶の気持ちが描き切れていないのが残念。それでも、哀しく切ない人間模様はドラマ化されたのも納得の出来で、江戸川乱歩賞の名に相応しい正統派だと思う。2019/09/15
zero1
198
多くのことを考えさせる作品。読友さんのレビューで関心を持ち読んでみた。20年前の誘拐事件を再調査するよう東西新聞社長から命じられたのは過去の事件で左遷された男、梶。優秀な内定者は誘拐犯の娘だった?週刊誌の記事から物語は始まる。梶は元刑事などの協力を得ながら事件の真相を知る。事件の核心は中盤までで予想できた。粗く甘さはあるものの、さすがは乱歩賞作品。被害者夫婦に事件の終わりはないなど描き方が上手い。読者を引き込む術を知っている。作者はニッポン放送記者(現フジテレビ)。2019/03/02
やま
170
「週刊秀峰」に大手新聞社である東西新聞に『誘拐犯の娘を記者にする大東西の「公正と良識」』という衝撃的な見出しでスクープ記事が載ったことから、この物語は始まります。あとから気が付くと、最初から誘拐犯の娘と誘拐された男の子が友人として登場していたのにはビックリしました。この誘拐事件は、驚くべきことに3組の犯人がいたのです。1組2人は、誘拐事件を知りそれを利用して病院から身代金を脅し取ろうとした者たち。その指示で実際に身代金を受け取りに行って亡くなった2人。🌿続く→2022/01/15
修一朗
135
窓際中年記者が,時効済みの20年前の事件を追うことに… 魅力的な社長を始め,一人一人の登場人物像の作りこみがしっかりしていて,リアリティを損なわない。徐々に真相に近づいていく展開は緊迫感あり。再調査のきっかけが[葉山様]というところは引っかかったけどね。丁寧に読んでいくと,帰納的に犯人はわかるが,そこは無理に伏せることもしておらず,正直な構成、玄人好みの気持ちのいい文章だった。面白かったぁ。ちなみに私は「エピローグ不要」派です。2015/02/24