出版社内容情報
「あの子に訊きたい。生まれてきてよかった?」
悩む妻に夫が語る、過去からの伝言
不治の病を患う息子に最期のときが訪れつつあるとき、宮本拓実は妻に、20年以上前に出会った少年との想い出を語りはじめる。どうしようもない若者だった拓実は、「トキオ」と名乗る少年と共に、謎を残して消えた恋人・千鶴の行方を追った――。過去、現在、未来が交錯するベストセラー作家の集大成作品。
初出:2002年7月に小社より刊行された『トキオ』を『時生』と改題した作品。
内容説明
不治の病を患う息子に最期のときが訪れつつあるとき、宮本拓実は妻に、二十年以上前に出会った少年との想い出を語りはじめる。どうしようもない若者だった拓実は、「トキオ」と名乗る少年と共に、謎を残して消えた恋人・千鶴の行方を追った―。過去、現在、未来が交錯するベストセラー作家の集大成作品。
著者等紹介
東野圭吾[ヒガシノケイゴ]
1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業後、生産技術エンジニアとして会社勤めの傍ら、ミステリーを執筆。1985年『放課後』(講談社文庫)で第31回江戸川乱歩賞を受賞、専業作家に。1999年『秘密』(文春文庫)で第52回日本推理作家協会賞受賞
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
763
この作品の着想の元になったのは、ロバート・ゼメキスの"Back to the Future"だろう。ただ、私は主人公の拓実がどうも好きになれず、共感もしにくいのである。もっとも、その代わりにもう一人の主人公トキオには感情移入しやすいのではあるが。あるいは、それも作者の計算の内であったかもしれない。他の登場人物では大阪のツッパリ姉ちゃん竹美がなかなかに痛快である。また、プロットは最初から通常の意味でのリアリティを捨てている分、叙述に力が入る。そうは言っても随分ご都合主義的であることも否めないが。⇒2020/11/24
Tetchy
759
本書の前に発表された『レイクサイド』では親は子供のためにはどんなことでもやるのだということを歪に、陰鬱なムードで語ったが、本書は子供は親にとってどんな存在なのか、そして子供は親をどこまで信用し、慕うことができるのか、と子供の側から親子の絆を描いている。つまり2作は全く物語の色調は違うが表裏一体なのだ。そして親にとって子供とは未来なのだ、どんなに辛くてもこの子のために生きていかねばならないという生への原動力となる存在なのだと高らかに謳っている。実にストレートな“泣ける物語”だがたまにはこんな東野作品もいい。2013/04/07
どんちん
376
SFファンタジー的な話は好きだ。が、これほどイラつき、不愉快な思いをした本は初めてだ。それでも読んだのは、父である拓実に、どういう経緯で変わったか、それを見届けたいということにつきた。作者によると、「バカを書きたかった」ようだが、こいつはバカというレベルか?非常識の塊だぞ、本当に東野圭吾はこいつが一番好きなキャラなのか?と、とにかく八つ当たりをせずにはいられなかった。とはいえ、エンディングはすっきりとしており、また感動するものであった。この感動を素直に受け入れることにより不愉快な思いが報われた気がする。2012/10/28
忠犬じろレポ
320
家族の絆を考えさせられました。時生の人生は短かったけど充実してたと思いますね。どんなに辛い境遇でも必ず生まれてきた理由があるんだよって。内容はSFですがダメ男になりそうな父親を更生?させ、母親の命を守るため歴史を少し変えた息子の達成感が伝わってきました。 東野圭吾おそるべし。(^^) 2013/06/11
せ~や
313
こんな壮大な物語がきれいにストンと落ちるように終わるのはすごいなって感じました。「どこか旅に出ていった」という表現が、なんだか前向きで素敵だなって感じました。「生まれてきて幸せだったのか?」の答えを実はしっかり聞けていてよかった。2015/11/24