出版社内容情報
藤沢 周平[フジサワ シュウヘイ]
著・文・その他
内容説明
貧しい浪人生活から儒者、歴史家としてようやく甲府藩に召し抱えられた新井白石は、綱吉の死後、六代将軍家宣となった藩主とともに天下の経営にのり出していく。和漢の学に精通し、幕政改革の理想に燃えたが、守旧派の抵抗は執拗だった。政治家としても抜群の力量を発揮した白石の生涯を描く長編感動作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ふじさん
95
浪人生活していた新井白石は儒者木下順庵の力添えで甲府藩に仕官することになる。綱吉の死後、六代将軍となった甲府藩主の家宣と共に、幕府の経営に関わることになる。家宣の強い信頼を得て、武家諸法度や南蛮人の取り調べ等、和漢の学に精通し、儒学を超えた知識を力に幕政改革に関わることになる。旧来の慣習に囚われる勢力からは、強い反発も受けるが家宣と重臣間部詮房の強い支えを得て、次々と難題を解決に導いて行く。偉大な人物を人間的に描いた力作で、儒学者・政治家としての新井白石の業績を改めて知ることが出来た。 2022/10/26
Book & Travel
55
江戸中期、六代将軍家宣のもとで正徳の治を進めた儒学者・新井白石を描いた歴史小説。筆者の実在の人物を元にした小説は、「蝉しぐれ」のような創作の時代小説に比べると読み易くはない印象がある。本作も人物や役の異動、贈答品等の詳細が記録小説のように書かれ読むのが大変な所もある。だが読み進むうちに、日常の淡々とした描写から白石が等身大に感じられ、苦労の中で究めた学識の深さから次第に重用されていく展開に、いつの間にか浸り込んでいた。白石の行く末は何となくは知っているが、それだけにどう描かれていくのか下巻も楽しみだ。2018/01/15
kei302
53
海坂藩城下町 第8回読書の集い「冬」◇新井白石の生涯を、学者の側面からよりも、幕府の政策に関わった重要人物として描かれた、藤沢作品には珍しい(たぶん)歴史小説の色合いが濃い。学者さんだった? 政策の作成をしたり、外交を任されたりと時の将軍から信頼されていたようだ。朝鮮通史の部分が助長過ぎと思って読んだが、下巻への伏線だった。敵も多いし身体も弱いし、下巻が心配。2023/01/16
けぴ
47
新井白石を描く。藤沢周平作品は意外とノンフィクションは少ないのでどんなものかと思ったが、司馬遼太郎というより吉村昭風の史実にきっちり沿った描き方。お腹が弱いところが人間味ある。下巻へ!2021/11/23
大阪魂
43
藤沢さんの歴史小説!時代もんちごて六代将軍・家宣、その寵臣・間部詮房に仕えた儒者・新井白石が進めた正徳の治を詳細にわかりやすくかかはった物語!浪人から木下順庵の推挙で甲府藩に採用、生類憐みの令など綱吉の失政とか萩原重秀の粉飾決算、最高儒者・林信綱の頼りなさから家宣を支え、儒者らしく民のための政治を進めてく白石、虚弱やし結構高齢やけど家宣たちの信頼にむちゃやる気だして敵作りながらも頑張る姿はすごいなあって尊敬!大奥婦女記の裏の世界よめてより理解できたし密入国宣教師シドッチとのやりとりも面白かった!すぐ下巻!2025/08/28