出版社内容情報
新装版 司馬遼太郎の名作
明治維新の激動期を司法卿として敏腕をふるいながらも、明治6年、征韓論争で反対派の大久保利通、岩倉具視らと対立。敗れて下野した江藤新平は佐賀の地から、明治中央政府への反乱を企てたが……。34歳から41歳までのわずか7年間に、栄光と転落を味わった「ふしぎ」な生涯を描く傑作歴史長編。
転変
五人の参議
佐賀へ
長崎の宿
挑発
佐賀城争奪
脱出
指宿の湯
三月の雨
土佐甲浦
大久保日記
司馬 遼太郎[シバ リョウタロウ]
著・文・その他
内容説明
明治維新の激動期を司法卿として敏腕をふるいながらも、明治六年、征韓論争で反対派の大久保利通、岩倉具視らと対立。敗れて下野した江藤新平は佐賀の地から、明治中央政府への反乱を企てたが…。三十四歳から四十一歳までのわずか七年間に、栄光と転落を味わった「ふしぎ」な生涯を描く傑作歴史長編。
著者等紹介
司馬遼太郎[シバリョウタロウ]
1923年大阪市生まれ。大阪外国語学校蒙古語科卒。産経新聞社勤務中から歴史小説の執筆を始め、’56年「ペルシャの幻術師」で講談倶楽部賞を受賞する。その後、直木賞、菊池寛賞、吉川英治文学賞、読売文学賞、大仏次郎賞などに輝く。’93年文化勲章を受章したが、’96年72歳で他界した
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感想・レビュー
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いつでも母さん
129
江藤は苦手だ。いや、嫌いなタイプだったはずが。時代という波に乗り、うねりの中に沈んでいった漢・江藤新平。清濁併せ飲むことの出来ぬ性質なのか、理論武装だけでは立ちいかぬのが政治なのだろう。国家とは権力とは・・近代日本の夜明けに個人の思いが強すぎる。自らが整備した警察によって囚われの身に。あゝ、川路よ・・江藤は策士、策に溺れるを地で行ったのか。しかし、ここまで嫌うか大久保よ。憐れだ・・不器用な江藤をとことん嫌いになれなかったのは、司馬さんの作風にしてやられたのだろうな。哀しい歴史の裏側を見せられた感じだった。2017/10/05
遥かなる想い
86
下巻は 征韓論を巡る西郷と大久保の対立から始まる。 国家の行く末を決定する対立は、何度読んでも 緊迫する。下野した江藤新平は何を 思ったのだろうか?佐賀の乱における冷静な 大久保の対応とは異なり、佐賀の人々の混乱ぶりが 丁寧に描かれる。この時代の狂気のような 士族の不平が 各地で勃発した背景も丹念に伝わる。 維新後の英雄たちの激しい闘いの物語だった。2025/06/01
サンダーバード@読メ野鳥の会・怪鳥
74
日本の司法の基礎を築いた江藤新平。彼がこれほど波乱万丈の人生を歩んだ人物だとは思わなかった。極貧の身から持ち前の頭脳で法務大臣まで登り詰めながら、征韓論に敗れたこと転機に破滅の道へ。ついには勝ち目のない佐賀の乱を起こし、自らが構築した警察組織に捕縛される。自らが作り出した法によって裁かれ死刑となった彼の想いはどうだったのか。★★★★+
さつき
71
江藤新平が主役の小説なのに、薩の大久保、西郷の強烈な個性に圧倒されました。江藤がまだ佐賀にたどり着いてもいないのに、既に完璧にその征伐の段取りをつけている大久保。役者が違いすぎて悲しくなるほどです。大久保が尊敬した人物として徳川家康を挙げている点も印象的でした。天寿を全うした家康と、志半ばで斃れた大久保とではイメージがだいぶ違いましたが、勝利のために周到に策を弄する様は似ているのかな?2019/04/04
となりのトウシロウ
69
江藤新平とは不思議な人である。維新後の新しい国を作ることに獅子奮迅の働きをし、それだけの明晰な頭脳を持っていながら策士と言われる策略家ではなく、正論を戦わせれば全てが前に進むと考えていたのであろうか。二重鎖国佐賀藩の極貧の中で育ち、維新後に世の中に出てきてわずか5年で司法卿になり、まさに時流に乗ったのだがあまりにもその勢いが急過ぎて、その中にいた江藤には気づかなかったのだろうか。性急に事を為そうとするが為、生き急ぎすぎたのか。ある意味子どもの心を持っていた人なのかもしれない。2021/01/05