内容説明
娘の病を治したお礼にと、登に未解決事件の情報を教えてくれた男が牢の中で殺された。大胆な殺しの後、ゆうゆうと出牢した犯人を追い、登は江戸の町を駆ける―。家では肩身の狭い居候だが、悪事には敢然と立ち向かう若き牢医師・立花登が、得意の柔術と推理で事件を解き明かす。大人気時代連作第三弾。
著者等紹介
藤沢周平[フジサワシュウヘイ]
昭和2年12月26日、山形県に生まれる。昭和24年3月、山形師範学校卒業。昭和48年1月、「暗殺の年輪」を「オール読物」(三月号)に、同作品で第六十九回直木賞を受賞。平成7年紫綬褒章受章。平成9年1月死去
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感想・レビュー
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yoshida
144
円熟の藤沢周平さんの作品。読み終えるのが勿体ないと思いつつ読了。登がかなりの危険に遭遇しながら、柔術で相手を押さえる様子に読み応えあり。ここまで様々な事件に深入りすると、いずれは大怪我をするのではと心配する。叔父と一緒に子供の治療にあたる姿は、やはり医者だなと思う。何より、おちえとの距離が縮まり微笑ましい。事件が解決し一緒に出歩くことが減り「つまらない」と話すおちえの姿が、とても印象的。いよいよ次巻で最終巻。どのような大団円を迎えるのか楽しみである。中井貴一さん主演でドラマ化され、巻末の特集も嬉しい一冊。2019/09/04
ふじさん
93
「白い骨」は、牢を出ても行き場のない身体の弱った辰平を昔のしがらみを捨てて受け入れた妻のおむねの優しさと思いやりの気持ちが心に沁みる、死んだ辰平も成仏出来たことだろう。「みな殺し」は、むささびと異名をとった盗賊に関わる人々の顛末がなかなか読ませる。「影法師」は、おせちが主人公の作品だが、犯人がいるのかいないのか、犯罪が存在するのしないのか、目に見えない不安と心を揺さぶる不吉な予感が読者を引き付ける。今回も犯人を追って江戸を駆け巡る登の活躍が眩しく、起倒流の柔術の技と推理が冴える。 2023/03/05
タツ フカガワ
73
再読。獄医シリーズ3作目は6話の連作。辰平はケチなかっぱらいで捕まった五十男で死病を抱えていた。身寄りはないと言っていたが、女房子もいると知った登は女房おむらを探しだし、出牢した辰平を預けるが、まもなく辰平が殺されたことを知る。ダメ亭主が家に戻るまでのほのぼのとした描写が一転、登の怒りが沸騰する「白い骨」がいい。講談社文庫版巻末では1982年にNHKの連続ドラマで主役の中井貴一インタビューを収録。これも面白かった。従妹のおちえ役は宮崎美子、叔父の小松玄庵は高松英郎、叔母松江は中原ひとみという配役でした。2025/08/26
かわうそまん
56
安定の面白さ、安心の読みごたえ。今作はタイトルが「愛憎」となっているせいか、哀しみや切なさを感じるものが多かったような気がします。中でも「秋風の女」のおきぬが物語の最後に見せた寂しげな様子が印象的でした。2018/03/03
も
51
立花登シリーズ第3弾。今回は大捕物ばかりのお手柄。でも辰平や芳平の死は悲しかった。おむらさん、かわいそすぎる…。2016/06/06