内容説明
殺人犯を特定できない警察をあざ笑うかのように、次々と人を殺し続けるマークス。捜査情報を共有できない刑事たちが苛立つ一方、事件は地検にも及ぶ。事件を解くカギは、マークスが握る秘密にあった。凶暴で狡知に長ける殺人鬼にたどり着いた合田刑事が見たものは…。リアルな筆致で描く警察小説の最高峰。
著者等紹介
高村薫[タカムラカオル]
1953年、大阪に生まれる。国際基督教大学を卒業。商社勤務をへて、’90年『黄金を抱いて翔べ』で第3回日本推理サスペンス大賞を受賞。’93年『リヴィエラを撃て』で日本推理作家協会賞、『マークスの山』で直木賞を受賞。’98年『レディ・ジョーカー』で毎日出版文化賞を受賞
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
502
上巻で、ほぼその構造が提示されていたので、下巻におけるサスペンス性は乏しくなる。その一方、物語の推進力と緊張は、ここからさらに加速されてゆく。しかし、最後まで疾走した果てに、こんなところで終わってしまうのか、との思いを抱く。権力の中枢への切込みも、作家にとってこのあたりが限界だったのだろうか。見方を変えれば、十分に言及しえたとも言えるのではあるが。また、純粋に小説のエンディングとして見れば、この最後は壮大にして哀切を漂わせながら、なおかつ比類のない美しさと透明な輝きとを持っている。2017/10/17
遥かなる想い
264
下巻に入り、一気に物語は動き出す。 現在と過去を繋ぐもの… 山岳サークルで5人の大学生が結んだ盟約とは 何だったのか? やや 定番の決着のような感じだが、 全編を貫く 荒い息遣いが 不気味で、 郷愁と悔恨が 入り混じった 印象が強い、 そんな作品だった。2018/08/16
zero1
202
「山とは何か?」この力作は問う。凄惨な事件が続き、圧力もかかって捜査は難航。合田たち捜査陣は疲弊する。何事も処理を誤ると未来が歪む。これはミステリーではなく、表現しているのは人間そのもの。地位のある人に自由はなく、精神的に病んでいるマークスは自由という皮肉と対比。私が5人のうちのひとりならどうしたか?結末はこれしかないだろう。髙村作品は精神的なダメージが残るので続けて読めない。欠点を補って余りあるパワーこそ本書の魅力。事件とは1時間ドラマにあるような、発生後40分後で解決する簡単なものばかりではない。2019/01/18
Atsushi
160
下巻に突入、物語は思わぬ急展開。上巻で散りばめられていたパズルのピースが一気に結びつく。久しぶりの一気読み。マークスこと水沢のラストの孤高の死が悲しい。二重人格者である彼を殺人にまで追い詰めたものは何だったのか。読み応えあり、お薦めです。第109回直木賞受賞作。2017/10/21
s-kozy
149
次々に起きる殺人事件、容易には真実には迫れない刑事、真相にはこんな理由があった。人生も半ばを過ぎ、来し方、歩んで来た道を振り返る。全てを他人に晒け出せる人生などあるのか?このまま進んで行けばそれで十分などという人生などあるのか?中年から熟年の現代日本に生きる男どもの真実を描いた傑作と言えるのではないでしょうか!結論、「題名は『マークスの山』以外にあり得ない」。極限状況に身を置くとそこに人生の縮図が現れる?濃密に浸りながら結末に近づいていく、読書の喜びをグイグイグイと味わうことができました。2015/09/09