内容説明
三十年も車椅子の娘を支えた気丈な母がぼけ出した、母のため初めて食事を作り、風呂に入れ、カテーテルの処置をする。「オイツメテハイケナイ」呪文を唱え、時に「鬼の邦子」になって老いに寄り添う。悔いのない別れなんてあるんだろうか。万朶の桜の中、逝った母への癒し難い思いが胸に痛い。老い、介護とはを問う名篇。
目次
第1章 母と2人(冬の花火;母を呼ぶ ほか)
第2章 別れの日々(ひそかな賭け;まぼろしの母 ほか)
第3章 哀しみを越えて(春新しく;彩ちゃん天使になる ほか)
第4章 人のぬくもり(ジューン・ブライド;森恵ちゃんと母 ほか)
第5章 思い出とともに(再会;死のウェディングドレス ほか)
著者等紹介
大石邦子[オオイシクニコ]
福島県生まれ。会津女子高校卒。1964年通勤中のバスで事故にあい左半身麻痺となり、1967年「第四領域症候群」と診断、不治の宣告を受ける。翌年カトリックの洗礼を受ける。1971年退院、熱海に転地療養の後、自宅にもどり車椅子の生活を続ける。自らの体験をもとに執筆のかたわら、各地で講演を行う。1983年歌集『冬の虹』で第36回福島県文学賞受賞
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