内容説明
淡路島の貧農の娘・お登勢は、徳島藩の家臣・加納家に奉公に出た。そこで陪臣・本田貢に惹かれるが、加納家嫡男に恋慕される。分藩運動に起因する稲田騒動や北海道静内への移住を背景に、幕末から明治にかけての波乱の時代、愛を貫き、修羅場をくぐり、大地に生きる“永遠の女性像”を描いた長編歴史ロマンの傑作。
著者等紹介
船山馨[フナヤマカオル]
1914年札幌生まれ。「北海タイムス」記者をへて1939年上京し、四社連合に勤務。1941年抒情的な『北国物語』で作家デビューした。1947年野間文芸賞奨励賞をえた『笛』や『魔術師』などで第一次戦後派として活躍したが、健康を害し、低迷期がつづく。1967年一女性の流転を描く雄大な『石狩平野』で復活、以後日本近代史を背景とした壮大な長編ロマンを展開した。1981年『茜いろの坂』で吉川英治文学賞を受賞。同年8月心不全で逝去。『船山馨小説全集』12巻(河出書房新社)がある
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感想・レビュー
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のびすけ
29
幕末から明治の激動の時代を逞しく生きるお登勢の物語。徳島藩と稲田家の対立を背景に尊攘運動、池田屋事件、稲田騒動に翻弄される前半部と、稲田家一族の北海道移住と開拓の苦難を描いた後半部。貢への愛と自分の信念を貫くお登勢の生き様に圧倒された。特に静内での過酷な自然との闘いでは、お登勢の人間としての強さに心が震えた。ただ、最後は突然物語を着地させた印象。新聞連載の兼ね合いもあったのだろうか?続編もあるのでぜひ読みたい。船山馨さんの作品が軒並み絶版になっている。こういう名作はぜひ復刊して読み継いでもらいたい。2023/01/04
まーみーよー
18
心が震えた作品。良作。北海道静内、宮本輝「優駿」にある日本有数の馬産地である。幕末の徳島藩と家老の淡路島稲田家、因縁の稲田騒動の後、政府により稲田家主従は北海道静内の開拓を命じられる。池澤夏樹「静かな大地」も静内開拓の話であるが、本作品も淡路から静内に移住した一人の女性を主人公としている。「静かな大地」よりも時間軸が短いため開拓当初の苛酷な暮らしにこちらまで苦しくなる様だ。主人公お登勢が野生馬に魅せられ、馬に開拓の活路を見いだす場面が好きだ。いやしかし、主人公が芯のある女性なのに、くず男に惚れて残念だ。2020/08/25
RED FOX
18
帯の沢口靖子の写真を読書中何度も見てしまいました。お登勢かっこいい。淡路島の貧農の娘の半生。尊攘、維新、稲田騒動…愚かだったり素敵だったり、歴史が重く面白いです。2019/07/13
ポンポコ
5
仕事で淡路島に行って、洲本城址でお登勢の像を見たのをきっかけに手に取った。幕末から明治の初期に、徳島藩の中で庚午事変なる騒動があったこと、それがために淡路島の稲田家で悲劇があったこと、そして静内開拓の嚆矢。その中で翻弄された一人の女性、お登勢を主人公に激動の時代を描く。大部の作品ながらのめり込んで、え?ここで終わり?みたいなラストではあるけど、今日の馬産地としての静内を思えば、この労苦が実ったとも言える。時代の変わり目に翻弄されながらも、信念を貫くお登勢の姿は古さを感じさせない。名作はやはり名作だった。2018/11/05
Dio
3
「石狩平野」を読んだときに「なんでこの作家有名ぢゃないんだろう?」と思ったものですが、この人は時代を代表するベストセラー作家だったんだそーですね。静内開拓史、先人の苦労は本当に偉大だなぁ。2014/06/03